偽装の件

 当然、批判に与する立場で発言しますが。
 口が裂けても言わないでしょうが、きっと、「どうせ食べてもわからんくせに」という思いは当然お持ちなんじゃないでしょうか。
 もちろん、わかりません。あ、人を一緒にしたらあきませんね、少なくとも僕は、手ごねなんだか既製品なんだか・有名産地なんだか無名なんだか・鮮魚なんだか冷凍なんだか、わからんと思います。きっと。でも、そういうことじゃないんですね。
 店の名は保証なんです。料金も。高級で安心感のある雰囲気を味わう、というのは、サービスも品質も間違いない、という信頼を味わっているのです。だから騙したり手を抜いたりしてもらっちゃ困るんです。名を誇るというのは、そういう責任を負うことなのですから、プライドを持って恥じることのない仕事をして貰いたい。
 一方で、消費者も薄々は感付いているはず。あまりにも大規模になりすぎたら、きめ細やかなことなんてやってられる筈はないんだ、と。仕入れから給仕までの長いプロセスの間には専門ではない人もたくさん経由します。その人たちに問題があるというのではなく、こだわりきれる仕事量じゃなかろう、ということです。
 結局、本当に良質の・誠実な仕事を味わいたいなら、その道が本当に好きで、個人で目の届く範囲で精一杯、でも楽しみながら仕事をしている人の許に通うべきです。大規模高級店には、雰囲気を味わいに行くもんだ、と、個人的には思っているのですが。だから安心して味音痴の舌を持参して、「やっぱり美味いよね!」と語り合えるのです。その楽しみを、奪わないで。