吹き替えが楽しい

 最初に映画館で観るときは、できれば役者本人の生声を、と思って字幕版を選ぶことが多いです。『パシフィック・リム』は2D字幕版の後3D吹き替え版を観ました。あれは良かった。
 何度も観ている映画を吹き替え版で再鑑賞、という楽しみもあります。最近ではこの吹き替えにもこだわって、昔吹き替え文化全盛だった頃の音源を使って「吹き替えで楽しむ」を目玉にしたディスクも発売されていて、むちゃくちゃ面白いです。

 ということで007です。
 50年のシリーズの間に六人の俳優が主人公を演じています。同じ人物を演じていても、当然役者の個性に合わせてキャラクターは微妙に変化しています。だから、どの役者をどの声優がアテるか、という比較の面白さが生じます。
 まず初代ショーン・コネリー。コネリーの時代はフィックスと言って「この俳優の声はこの人」というハマり役が決まっていて、コネリーなら若山弦蔵、というのは定番中の定番。ところが歴史が古いので同じ人の吹込みでも、若いころの吹き替えと最近のとでは雰囲気が違います。若いころのコネリーにはやはり歳の近かった頃のが合うような気がします。一方でやたら貫禄が出てきてしまった『ダイヤモンドは永遠に』のコネリーに、悪役でお馴染みの内海賢二が声をアテたバージョンがあり、これが結構合っていたりする。一方で若山氏以前にアテていた日高晤郎氏のバージョンはかなり生硬な感じがしますが、シリーズ初期だとそれも意外とアリな感じで、面白いです。
 ロジャー・ムーアのボンドは広川太一郎の独擅場。アドリブで有名な広川氏ですが007ではアドリブは封印、とご本人が決めておられたそうで、それだけ特別な役だったのでしょう。たった一度登場の二代目ジョージ・レイゼンビーも広川氏がアテていて、全く違和感ありません。
 たくさんの声優のバージョンが発生しだすのが四代目以降。しかし、さすがにプロフェッショナルの声優さんは器用だと思います。それぞれにご自身の個性も活かしつつ、役柄を演じ分けている。主演のヒーローを演じる一方で、シリーズ他作では悪役に回られる人もいる。面白いです!
 で、四代目。ティモシー・ダルトン主演版は2作しかないのに、吹き替えではいろいろなバージョンが存在します。本人の声が相当低音なので、知的な感じを優先させて演じた小川真司版よりも、山寺宏一版の方がしっくりくると個人的には感じます。大塚芳忠版になると今度は貫禄あり過ぎな感じ。他にも鈴置洋孝田中秀幸のバージョンもあり。田中さんは次代のブロスナン・ボンドも演じています。
 その五代目ピアース・ブロスナンは、前述の田中さんの他、神谷明江原正士のバージョンが存在。ブロスナン・ボンドはシリーズでも一番甘いハンサムタイプなので神谷さんがいいのかなと思ったら、個人的には田中秀幸版がクールさの加減が一番マッチしてるように感じました。彼はダルトンよりこっちがいいかな、と。あくまで個人的な感じ方。江原さんはかなり低音でハードな感じで行ってます。
 現役六代目ダニエル・クレイグは、藤真秀版しか知りません。それ以前に小杉十郎太版があって、藤氏への変更にファンから賛否あったという文章を読んだことがありますが、自分で観てみたいものです。小杉氏は二代目レイゼンビー・ボンドもアテたことがあるとのこと。こちらも観たい!

 ちょいちょいと比較だけは観てみたいという方にこんないいサイトがあります。
ショーン・コネリー『ゴールド・フィンガー』比較http://nicoviewer.net/sm19463906
ティモシー・ダルトン消されたライセンス』比較http://nicoviewer.net/sm20322388
ピアース・ブロスナントゥモロー・ネバー・ダイ』比較http://nicoviewer.net/sm20809229

 そして渾身のこだわり作、TV放送吹替音声を全バージョン最長版を完全収録という007シリーズのDVDがあります。この商品のホームページは吹き替えに関するコラムなども満載で見応えあります。http://www.007fukikae.com/