ハードボイルドの原点(2) ロング・グッドバイ

 昨夜は眠気に負けてえらい中途半端な終わり方をしましたが。どっちみち何回か続けてこのネタで書くつもりでいました。
 世評では昔から馴染みの清水版が好評で、中には読みもせずに村上版を無意味などと断じておられる向きもあるようです。『ロング・グッドバイ』読了後勢いで、原書・清水版・村上版を比較した本も読みましたが、これもまた僕の目には、清水版を称揚せんがために村上版にケチをつけたい気持ちが全編ににじんでいるように感じられたこともあり、少々期待外れでした。違う翻訳を同時に楽しめる機会というのも面白いので、次は清水版『長いお別れ』にも改めて挑戦してみたいと思っています。
 肝心の中身ですが、この反骨とロマンティシズムの匙加減は、実に自分の嗜好の(志向の)中心を突いて来るものでした。謎説きも勿論重要なのでしょうが、やはり本書は主人公マーロウの生き方を読むものなのだろうと思います。また本書ではテリー・レノックスという人物の存在が大変大きい。簡単には解き明かせないふたりの男の想い、それゆえの別れが本作を特別な位置に押し上げています。まあ裏のある美女というのは一方で珍しくはありません。魅力的ですが。
 さあ、もっとこの作家の作品が読みたくなってきましたねえ。と同時に、「ハードボイルドの原点」を更に遡るべく、作者チャンドラーの先輩ダシール・ハメット、更にそもそもハードボイルドと言えばこの人アーネスト・ヘミングウェイに触れずにはおられなくなって来ました。白状しますが、この二人とも未読なのです。映像化作品しか知らない。是非、原典に当たらねば!