実に完成度の高い『瞳の奥の秘密』

 この記事http://doraku.asahi.com/entertainment/movie/review/100818_2.htmlを新聞で読んだのを覚えていて、たまたまちょこっと時間が空いたので観ることができました。観ることができて本当に良かった。まずは記事をお読み下さい。それで事足りるので僕の文章は蛇足か。
 過日書いた『ボローニャの夕暮れ』同様この作品も歴史的背景が影を落していますが、本作はより時代が必然を持っています。しかし、一見地味ながら、本当に脚本にせよ映像にせよ、映画的興奮の詰まった、実に緻密な作品です。これもっともっとたくさんの人が観るべきですね!

 過日試写で観た、現在公開が始まって好調に観客動員している某作品と比較するのもヤボなのですが。本作を観ると、「10年にわたる純愛」とか甘いですね。年数を単純に比較する訳じゃありません。あんなん、まだ充分若くて「やり直し」と言うほどですらない。ボタンの掛け違いが全部うまいこと収まって、別になんということもないじゃないか。すみません、ワケワカランですね。ドイルの小説『五十年後』も思い出します。もう、どうにも取り返しのつかない年月を経てなお変わらぬ愛がある。この映画が原作から改変したという、主人公ベンハミンとイレーネの物語があるからこそ、本作は厚みを増したのだと思います。無論サスペンスものとしても充分見ごたえはありますが。