じわじわと来る『ボローニャの夕暮れ』

 実直な教師だがさえない父。美人過ぎる母。そして自信がなく、精神不安定な娘。父が焼いた娘へのおせっかいが、思いがけない惨事の引き金となる。「母」になりきれぬ母に対し、父はすべてを投げうって娘に尽くすことを決意する・・・・。
 タイトルのイメージに反し、徹底的に重たい物語だ。「家族」を描くのはイタリア映画のお家芸だが、ここで描かれるのは父も母もちょっと異質だ。しかしそれがいい。なんにもわかってない父と思っていたら、実は全てわかった上で、すべてを自分が引き受けていたのだと観客が気づかされてから、このさえない男のイメージがすっかり変わる。そして、崩壊した家族に最後に訪れる奇跡の瞬間。
 時間が経つにしたがって、じわじわと来るものがある。これもまた凄みのある映画だ。