「サーカスの怪人」ほか→「怪人二十面相、伝」→「K−20」(その2)

 そして映画。やはり原作小説とは全然違いました。「翻案した」というレベルの違いではなく、小説のいくつかの要素を活かしただけで、全く違う物語でした。それはそれでいいんだと思います。実際映画は、ハリウッドアクション大作を彷彿させるなかなかの作品。細かいところで突っ込みどころのむちゃくちゃ多いところまでハリウッドのアクションものみたい。そこが気になるかならないかがこの映画を楽しめるかどうかの分かれ目になると思います。若い役者たちの演技力も望むべくもないし、第二次大戦を回避した「あったかもしれない」架空の帝都東京という設定もさほど活かされているとは思えない。しかし作品世界のビジュアル化やアクションには見るべきものがあり、できればやはり映画館で観たい作品でした。こちらもやはり明智探偵&小林少年の描き方が「原作世界(乱歩の)を裏切るもの」と批判されていますが、この点こそ舞台が現実とはパラレルな架空の帝都とされているおそらく最大の理由です。映画冒頭で「みなさんが知ってる少年探偵団ものとは別世界の物語ですよ」と宣言しているのではないですか。この映画は映画で、結構楽しむことが出来ました。
 ちなみに映画にはちょい役で嶋田久作が出てきます。映画「帝都物語」とだぶらせる方が多いようですが、僕は同じ実相寺昭雄監督作品でも氏が撮ったいくつかの乱歩もの(屋根裏の散歩者」や「D坂の殺人事件」など)で明智小五郎嶋田久作に演じさせていたのを思い出し、ニヤリとしてしまいました。これ知ってると、映画最後の「意外なる真相」の伏線にもなっていたことにも気づきもう一度ニヤリとなるのですが・・・・。

 で、結論。一番面白かったのは、僕にとっては北村想の原作小説でした。映画とは逆に、こちらは戦後という時代背景が作品の大きな屋台骨になっていたように感じました。