映画「誰も守ってくれない」

 これも試写で観てもうだいぶ経ちます。既に劇場公開されてる。ずっと書きたかったんですが。
 大して期待もせず観たんですが、とても良かったです。地味だけど、とてもよく作られていてたと思います。
 犯罪加害者家族の保護がメインモチーフ。少年犯罪の、その犯人の家族が、マスコミの過剰報道とネット上での無責任で執拗な攻撃・追跡によって、一瞬で崩壊してしまう。それを守ろうとする刑事にも拭えない過去がある。家族とのすれ違いもある。それがデリケートに描かれています。
 正義を気取って無責任に人を糾弾するマスコミや、匿名性をかさに着て自分は安全な処から屈折した興味本位でひとを追い詰めるネットの連中の描き方は、大袈裟なようでそうでもないと思います。犯罪被害者の心情と、加害者家族の心情。全然違う立場ながら、共に第三者が無自覚に踏み込めない重さには共通する部分があることを感じさせます。無論罪は罪。そしてある程度(特に子どもの犯罪については)家族の責任というものもあるに違いありません。でも、それを責める権利は誰に? 
 ぼろぼろに傷つきながらも人間の生きる強さを信じ、少女を守ろうとする刑事は、自身も少女のあくまで家族を守ろうとする姿に心の傷を癒されていきます。誰も守ってくれないという非情なタイトルには、反語的な希望の光も微かに射します。
 映画公開初日に、この物語の前日譚がテレビドラマで公開されていました。仕事で途中からしか観られませんでしたが、確かにこれを観てから映画を観れば、なるほどと思わせられる伏線がいっぱい張られていました。こういう脚本を書く人の作品なら、「踊る題走査線」も世評通り良い作品なんでしょうね。