座頭市の物語(1.原作小説)

 座頭市が気になって仕方がない。
 それは映画「ICHI」を観てからだ。北野武版「座頭市」を観たときには旧作には全然興味など湧かなかったからおかしい。たけし版はそれだけ充実度が高かったのだろうか?
 調べてみると、この役を当たり役とした勝新太郎が主演した映画シリーズは何と26作品もあった。他にテレビシリーズも多数。これは凄い。これだけのシリーズを生んだのがたった十数ページの掌編小説だというから尚びっくりするが、まずはその原作を読んでみる。子母澤寛の「座頭市物語」。作家が旅の途でかつていたとの噂を聞いたのが座頭の市。盲目とも思われない堂々とした風情。やくざではあるが喧嘩が始まると居合いの技を見せて双方黙らせてしまうから、庶民からは人気があったらしいという。話は自然に創作に溶け込み、浪曲天保水滸伝」でお馴染みの飯岡助五郎の笹川一家への殴り込みのエピソードに昇華される。「やくざ者は渡世の筋目を通せ、大手を振って天下の下を歩くな」という哲学が、この人物をきりりと引き締めて息のある人間として立ち上がらせた。これを基に、映画は人物像を造形して行ったのだろう。

(暫く続きます。たぶん5回くらい)