桜桃忌でした

 朝職場に着いて自席に就くと、机上に一句を添えたさくらんぼうの実がみっつ載ってました。男性の下の名があるのにすぐにピンと来なかったのは、まだ転勤間もないからでしたが、それがある国語の先生であることに思い至って、お礼を言いました。どこかへ行かれたのかどこからか送られてきたもののおすそわけなのか・・・・と思ってしまったのは野暮の骨頂でした。句の方に目が行ってなかった。

 咲く花の 課に追わるるや桜桃忌

 そう、今日は桜桃忌だったのです。
 他の国語の先生も出勤して来られ、僕とおんなじような顔をされているから、「K先生ですね。それ見るまで、今日が桜桃忌だってことも忘れてました。粋ですよね」と申し上げるとハタと得心されていた。
 さくらんぼうは、すぐに食べました。かすかな酸味と苦みを含んだみずみずしい甘さは、いかにも桜桃忌を想わせる味でした。