20歳、これから伸びる。これから深まる。《日本のウイスキー 最近の話③》

余市1987

 先日14日は成人の日で、前の卒業生が成人を迎えました。写真を送ってくれた子もいて嬉しかった。彼曰く「Uママはメールくれてんで。43210はナシかい!」 もちろん本気で怒って言ってる訳ではありません。Uママと言うのはこの学年で担任ご一緒させて頂いた先生。さすがU先生!
 「これで大人の仲間入り」とも言っていましたが、テレビなどではもう毎年恒例となった「成人式での新成人の傍若無人ぶり」が繰り返されていて、実感としては「これからだな、お前たち」という感じです。彼らとちょうど20離れた僕は今年2月で40。それこそ「これからだな、手前も」です。
 ニッカでは2004年から毎年暮れに20歳になるシングルモルト余市を出しています。昨年末には「1987」が出ました。http://www.rakuten.co.jp/hidanosake/696562/1853033/#1450505 ひとつ前の「1986」をバー・メイン・モルトで飲んだことがあり、これが印象強く残っていたので「1987」も是非飲んでみたいと思っていたのです。当然メイン・モルトにあるだろうと思っていたら、マスター「1本買うつもりだったのだけど、常連さんが『去年の方が良かった』と言っていて、高いもんだしそう言われるとちょっと躊躇するのだ」、と。バー・オークス・ドラムにもなくて、まだ現時点ありつけていません。無論自分で買えるボトルではなし。あの余市の20年熟成なら、たとえ一年前のボトルに及ばなくとも美味なのだろうなあ、と妄想を激しくしてしまう次第。バー・織田ならあるかなあ。
 この「1987」とほぼ時を同じくして、ニッカからは他にも面白いものが出されてます。ニッカが誇る、グレーンウイスキーのために所持しているカフェ式連続式蒸留機という珍しい設備で、なんとグレーンでなくモルトウイスキーを蒸留してみましたという遊び心溢れる「カフェモルト12年」。そしてピュアモルトウイスキーの「北海道12年」。北海道なら当然余市モルトを使っているのだろうけれど、その名を冠していないから少し宮城峡のモルトもあわせているのでしょう。ニッカはニッカなりに、いろいろと考えて打ち出してきます。いい感じです。
 それにしても国産はちと高い。しつこいですが、20年、飲んでみたいな。ウイスキーの20歳は大変な熟成、大変な深みです。人間様は、いやみんな一緒にしては失礼だ、少なくとも僕は、40にして「熟成」なんぞという表現からはほど遠く。そこでまあ、せめて最初に使った言葉「これからだ」と思うことにします。まだまだ先はある。考えてみればウイスキーだって、ただ長い年月放って置いただけでは味わい深く熟成などしません。細心の注意と神経、愛情と努力が費やされて初めて、えも云われぬ深みを生むのですね。自分自身にも後生にも、慈愛と熱意と貪欲を。