国民の鑑と言いたいか

 過日おまわりさんが自殺しようとする女性を止めようとして命を落とされた痛ましい事故がありましたが、新聞の投書欄に、このおまわりさんの殉死を悼みつつも、この死を警察官の「手本」「鑑」と讃えるマスコミや世論に疑問を呈しておられる方がありました。共感するものがあります。
 無論このおまわりさんご自身を批判するものでは全くありません。本当にすごい方だったのだろうと思います。でも、この方の死を「見習うべきもの」として喧伝するのは違うと思います。ハッキリ言ってこれはかなり危ないです。
 お国は正義や誠意の名のもとに、お国のために命を捨てるを美し、とする価値観を静かに、しかし確実に浸透させつつあります。と、こんなことを言うと「お前はクミアイの手先か。大袈裟なことを言って美談に水をさして、けしからん!」と、こう言われます。こうして人道的な美談をまとって思想統制というのはひたひたと忍び寄って来るのですから、よく覚えておいて下さい。
 何事であれ、一身を犠牲にして、我が命を捧げてそれをよしとする教育なんてありませんからね。そんなことをひとに強いるのがおかしなことだ、と、これは立派なおまわりさんを悼む気持ちとは分けて心得ておかねばなりません。とっても怖いです。