小説「顔に降りかかる雨」桐野夏生

顔に降りかかる雨

「ダーク」の村野ミロが主人公として登場した最初の作品。ミロと、「ダーク」で彼女をぶっ壊してしまう端緒となる男成瀬を中心に展開して行く。二人のその後を知った上で読むと、なんとも複雑な心境である。とてもまとまった作品で、「ダーク」での暴走ぶりは全く想像もできない(書いた当時の作者自身もね)。いろいろと知っちゃってるものだから、いろんなところで「ああ・・・・」と思いながら読んだ。こういう順序もアリだ。
探偵ものだが主人公はまだこの時点で自分が探偵という職を父から継いだつもりはなく、ただ巻き込まれて動かざるを得なかっただけ。しかしミロの男前な性格から、結構ハードボイルドな語りだ。謎の男とベッドを共にしかけたりするのもまんま本場のノワールの展開で面白い。でもこれ主人公が女だったからというだけで、結構発表当初はとやかく言われたみたい。男ならハードボイルドで女だったら「いかがなものか」となるのは、どんなご立派な倫理観だ?
これもドラマになってるらしいですね。ミロが鶴田真由、成瀬が役所広司。全く別物だったんだろうな。特にミロが鶴田真由って、同じキャストで「ダーク」の映像化は絶対無理でしょうよ。ちなみに次作「天使に見捨てられた夜」を映画化した時のミロはかたせ梨乃。今度はちょいとドス利き過ぎか。