「映画『同じ月を見ている』を見ろ! そして原作を読め!」促進委員会発足

映画版


土田世紀の漫画「同じ月を見ている」をおりえから教えてもらって、教えてもらっただけでなく全7巻を贈ってもらい瞬く間に読みきってしまうのと、この作品が映画化されていて間もなく完全するということを知ったのはほぼ同時だったと思う。感想を書こう書こうと思ううち、映画は完成し、公開された。
この原作の漫画を読んで、初めて宮沢賢治の良さを実感した。最後に雨ニモ負ケズが出てくるんですけどね。勿論国語の教員ですから、この大詩人の文学的価値は頭ではわかってますとも。でもあの人のあまりのも無私な善人さというのが、ものすごくウソ臭かったのです。いや賢治が偽善者だとは思ってません。彼は本気だったのでしょう。でもそれが実感を伴ってピンとこなかった。
ところがこの漫画を読んで、主人公ドンちゃんの「自分を勘定に入れない」生き方が、激しく気持ちを揺さぶったのです。それと同時に、賢治の無私もがスッと心に落ちてきたのでした。あまりにもすさまじい作品だと思いました。
映画はこの全7巻の作品を2時間未満にまとめるのですから、ストーリーは相当変わっているのはわかりきっていました。また窪塚洋介主演として企画されたという時点で、それはイコール主人公はドンちゃんではなくてっちゃんになっているということもわかっていました。どれだけもとネタと違っていても構わないと思っていました。ただひとつ、ドンちゃんの人物像、その心だけ尊重していて欲しいと願っていました。
そして、それはほぼ上手にまとめられているなと思いました。
もちろん、薄まってはいます。映画雑誌に脚本家の話が載っていて、予算の都合で原作通りのクライマックスは最初から諦めなければいけなかったとありました。ストーリーを削る都合もあったのだろうけれど、あれではドンちゃんの自らの選択という大切な部分が相当弱まってしまった。普通の人にしてみればあまりに不条理で皮肉な、それ故にドンちゃんの本質が浮かび上がる展開(そしてボロクソ泣かずにいられないラストへの流れ)は、相当に弱くなってしまった。ドンちゃんの複雑な個性が、原作を知らない人にどれくらい伝わったか、という不安もある。やっぱりエディソン・チャンでは格好よすぎるよ。
でも、この映画だけ観ても充分感動するだろう。てっちゃんが主人公になったことで、より共感しやすくもなったろう。ひとつの映画作品としてちゃんと成立している。そして、必ず考える処があるだろう。
だからこの映画観ろ。そしてその後必ず原作を読め。
これからおっちゃんはそう言って宣伝してまわることにした。どうぞみなさんご協力を。


ps ドンちゃんが自分の内面を吐露した絵を描いたエピソードを残してくれていたのが嬉しかった。