映画 「マシニスト」

 こういう現実・非現実を彷徨うというプロットのものにはつい惹かれてしまう。この作は、1年365日寝られずにいる男が不可解な世界に足を踏み入れてしまうという話。
 必ず話題になっているのが主人公を演じるクリスチャン・ベイルの「激痩せ」。30キロ近くも体重を落として、脚本にあった「ガイコツのような」主人公を体現してしまった。脚本家はメイクかCGでなんとかするつもりだったのに、ベイルが自分の判断で医者付きでやっちまった。そりゃ本当に痩せてしまった方がいいに決まってる。この、肉体そのものの説得力は、CG全盛の映画界全体に突きつけるものがあったと思うな。まだコンピューターグラフィックスの技術はこの生身の力を凌駕するに至っていない。
 この話題の一方で、物語の「オチ」・・・・実際には何が起こっていたのか、そして不眠に陥った理由・・・・の方は「いまひとつ」「平凡」とあまりウケがよろしくない。確かにそう意外ではなかったかもしれないが、僕はものすごく納得した。むしろ後味の良ささえ感じた。人間性に対するちょっとした安堵さえ。
 映像作りも奇をてらわない一方でものすごく丁寧に繊細に作り込まれていると思うし、この監督いいなあ、と思ってしまった。僕は評価する。