おもしろい課題

チコさんからメールを頂いた。ジャズについての質問である。
最近ライブを聴きに行かれて、少しジャズを聴いてみたくなったとのこと。ところが、「弦楽器を中心に」というご希望なのだ。これはまた大変珍しい。
ジャズを生で聴いてみて、実は一番印象として体の中に残るのはベースの響きだと思う。フロントのメロディーラインよりも、あのズンズンという響きである。そのへんを言っておられるのかとも思う。が、やはりベースはリズム担当なので、重要なパートではあるがこれを前面に押し出した演奏・バンドというのは極めて少ない。さて、何をお勧めしたものか。
まあ一番いいのはやはりベーシストがリーダーになったセッションやバンドの演奏を探すことだろう。ベーシストでバンドリーダーといえば第一にチャールス・ミンガスだ。残念ながら僕はミンガスにあまり興味がないので「このアルバムがいいよ」というお勧めができない。それと、彼はあくまでバンドリーダーなので、彼ひとりが目立っているというわけではない。当然他のホーンプレイヤーやピアニストの音が、演奏としては中心になっているかと思う。
ポール・チェンバースという名手がいる。この人は常に自分のバンドを持っていた訳ではないが、なにしろ名手だから参加セッションで短時間でもソロを与えられることが多い。また自分がリーダーとなったセッションもあって、「ベース・オン・トップ」など僕は大好きだ。他に「GO」というアルバムもあった。どちらもホーンプレイヤーが入っているのでベースだけ聴く訳にはいかないけれど。
現役のベーシストでは大御所のロン・カーターなども自己名義のアルバムを多く出している。やはりソロ率は高い。少し変わったところでは、マルチリードプレイヤー、エリック・ドルフィーのリーダーアルバム「アウト・ゼア」でこのロン・カーターがチェロで参加し、ベースのジョージ・デュビビエと共に不思議なマッチをみせている。
あと、ベースを中心に聴くためには、やはり少人数編成の録音がいい。ピアノトリオとか。夭折の天才と謳われるスコット・ラファロなら、ビル・エバンスのアルバムなどで堪能できる筈。
もちろんジャズで使われる弦楽器はベースだけではない。少数派だがヴァイオリンをジャズに使うプレイヤーもいる。僕が好きなのは日本の寺井尚子。パワフルだし、ポピュラーナンバーなども積極的に取り入れているし、ついでにべっぴんさんだし、言うことなし。
ジャスヴァイオリンといえばフランスのステファン・グラッペリが有名。晩年もその明るさと軽やかさは衰えず、いつだったか何かのCMでも使われていたように思う。
クラッシックの人だがヨー・ヨーマというチェロ奏者が、割と積極的にジャズプレイヤーと競演している。これも聴く価値ありと思う。
とりあえず思いつく範囲で、こんなもんでどうでしょ?


ひとつ思い出したので加筆。
映画「ダディ・ノスタルジー」のサントラが、なかなかいいです。
ジャズ、ではないのですが、先述のロン・カーターをはじめ、ピアノ&歌のジミー・ロウルズなど演奏しているのがジャズプレイヤーなので、雰囲気は限りなくジャズっぽいです。弦楽器も大きくフィーチャーされてますのでおあつらえむきかと。監督が、過日よりしばしば登場させてます「ラウンド・ミツドナイト」のベルトラン・タベルニエなんですね。納得です。作品自体も淡々としていますが僕は大好きで、このサントラも愛聴版なのです。お勧めです。