講演会 義家弘介さん

ピンボケしてしまったが義家先生です

大阪教職員組合青年部が毎年この時期に開催している「青年フェスタ」の記念講演を聴いてきた。タイトルは「不良少年の夢 〜おまえらはおれの夢だ〜」。講師は義家弘介氏。テレビドラマ「ヤンキー母校に帰る」の義森先生のモデルとしてすっかり有名になった方だ。
いつもこの会はビッグネームを講師として呼ぶので講演会はたくさんの人が集まるのだが、殊に今回はすごかった。来場者が多すぎるので椅子をとっぱらい床に直座り。そこにも入りきらないのでモニターによる別室会場まで用意されていた。
以前なにかの雑誌で義家さんのインタビュー記事を読んだことがあり、おおまかながら彼が教員になるまでのストーリーは知識としてあった。が、やはりご本人が直接話されるのだから迫力が違う。ぐっと涙ぐませるかと思えばさらりと笑いに流し、勿論教員だから話すのは仕事とはいえ大変絶妙な語りであった。何より、僕がここで思ったことを書いていることと重なるようなことも多々おっしゃったのでとても嬉しかった。ただしこの方は思っているだけでなくちゃんと実践されているのだけれど。
たとえば、今の学校は「分業化」が進んでいる。例えば不登校の子は保健室に登校させる、心に問題を抱えた子はカウンセラーに任せる。その分業でまわされた場所がその子に合えばいい。そこがその子の居場所になれればいい。が、合わない子はどうなる? 完全に行き場を失い、切捨てられて行くしかない。だから、分業ではなく「みんなでやる」。僕も過日のコメントで申し上げたが、いろんな子がいるのだから、それぞれの子がそれぞれ自分が信頼できる教師を探せば良い。そしてその信頼できる教師のところへ行って病院に連れて行ってもらえばいいし、悩みを打ち明ければいい。ひとりのスーパーマン教師というのがいたとしたら、それは嘘です、と仰っていた。その通りで、いろんな生徒がいるぶんいろんな教師がいればいい。「全員が義家なら僕はそんな学校行きたくないデス」と言って場を笑わせておられた。
たくさんのことをお話になったのでここにみんな書くわけにいかないが、とにかく子どもに考える時間が必要だというようなことを仰っておられたのが格別印象に残った。彼は16で全てを失った。これが18ならまた違った人生になっていただろうと言う。18なら仕事ができるからだ。仕事ができない16歳は、考えに考えて、皮肉にもかつて自身で否定した「学校」に行くしかないと結論した。ところが今は、未成年だっていくらでも雇われている。働かせるな、と声を大にされた。ちょっと儲けて金を手にしていっぱしオトナになった気でその日その日の快楽にだけ、いくらでも生きられる時代だ。ただし、そんな日々は続かない。だから。考えて考えて、自分はどうすればいいかをとにかく考える時間を与えろ、ということだ。そもそも学校の語源「スコラ」の意味は「ひま」。今の子は「ひま」を嫌う。しかし『ひま」をいかにするか、ということは大事だなと僕も思う。義家さんのおっしゃったことと自分の考えがごっちゃに書かれてしまっているがご勘弁を。なるべく私見を挟まぬように書きます。彼が生徒に言うのは「夢は叶う」。ただし決してラクではない。まず徹底的に等身大の自分を見つめなければならない。弱いところも汚いところも、そのまんまに見つめなければならない。そうした上で夢を見出す。そして10年。10年間徹底的にその夢に向って努力する。そうすれば、必ず夢は叶う。そう仰る。事実、彼にとってエポックメイキング的なものは、起こって後ちょうど10年後に現実のものとなったという。教師として母校に戻ったこと。自分が言われた言葉「あなたが私の夢」という言葉を、本心から生徒に言えたこと。偶然なのか、全て10年後に現実のものとなった。これは説得力がある。
学校のすべきこととは何か。それは「希望」を与えること。しかし今の社会に「希望」など持てるのか? 疑問が渦巻く。そんな時、自分の子の誕生に立会い、この世の「希望」をこの目で見た、と確信した。ひとはひととして生まれるのではない。「希望」として生まれるのである。そこに寄り添って寄り添って、やがて「人間」として成長して行く、そのサポートをするのが学校ではないのか・・・・。
義家さんは度々自分が弱い人間であるということを口にされた。自分の弱さを知る人間の強さ。それをひしひしと感じさせられ、圧倒させられた講演会であった。