映画 「ルビー&カンタン」

久しぶりに観たフランスコメディ。ここのところやたらと映画鑑賞量が多いな。主演は大物二人、ジェラール・ドパルデュージャン・レノ。日本ではレノの方が名前が通っているのかも知れないが、なんといっても僕の好きなドパルデュー、彼こそ大物である。
しかし。そんな大物ふたりを起用しつつ映画はとにかくアホだ。囚人二人の脱獄珍道中だが、レノ演じる殺し屋がなんとか復讐を遂げようとするのに彼を勝手に親友と決めてしまった大アホドパルデューがつきまとって行くという展開。ドパルデューのアホぶりはとにかく見たことがないくらいすさまじい。銀行強盗に入ったつもりが両替屋に来てしまい、そこで国立銀行と教えられた映画館に入ってお縄になったというだけで立派にアホだ。そのアホさが徹底しているだけ、この作品は素晴らしいのだ。
後半は二人に友情が芽生え、涙涙の展開になるやと思いきや、結局最後オチのオチはやっぱりただのアホ。「ちゃんちゃん」でおしまい。な〜んの「意味」も「メッセージ」もない。が、これこそ「粋」というものではないか。
なんにでも妙に「テーマ」だとか「社会性」を必要とする、そしてそういうもののないモノを軽蔑する向きがある。これが「野暮」である。先日ある知人がやはりネット上でコメディ映画の感想を述べておられたのだが、評価しつつも「もう一度見たいとは思わない」だとか「そもそもコメディはほとんど見ない」だとか「消去法敵に見た作品だ」だとか、とにかく自分は本当はもっと価値のあるものの良さを知ってるんですよ、というスノッブな空気がぷんぷんしていて大変がっかりした。いいやん。コメディ見ようよ。意味なくてもいいやん。テーマばっかりご大層だが作品の出来としてはクズみたいな映画や小説もゴマンとある。そんなの見るよりよっぽどいいや。「意味」のないものが不要であるなら、体に悪い酒など即刻やめるべきだし、音楽なんて金輪際聴かなければよい。そうはいかないでしょ? だったらしょうもないもの大いに賞賛しましょう。大アホドパルデュー万歳!
(しかしこの映画のドパルデューしか知らないあなた、「レオン」でレノのファンになったあなた。この作品、実は二人が役を交換しても立派に成立することをご存知か? つまりふたりはそれだけ懐の深い、あなどれない役者なのですゾ!)