007 スペクター

 先行上映で既に観ておったのですが、感想文ひとつ書く時間がない。それはともかく。
 とても満足しました。と同時に随分不満もあります。公開始まったばかりの映画、しかもネタばれ遠慮すべき要素多大ゆえまだあまり詳細踏み込んで書けませんが。
 以前予告編からいろいろ内容を妄想していましたが、見当違いもありました。
・昔の写真に写っていたのはボンドの父ではなく両親亡きあと後見人になったオーベルハウザー氏でした。ただ少年ボンドと一緒に写っているもう一人の少年が今回敵役のフランツで、両者に幼時からの因縁があったというのは当たってた。
・予告編で流れていた、過去作『女王陛下の007』の音楽は、本編では使用されていませんでした。予告編ではこういうことはよくある。ただ、本作が『女王陛下の007』を多大に意識して作られたことは間違いなく、せっかくなら本編でも音楽使って欲しかった。あまりにあざとくなると思って避けたのか? 特に、エンドクレジットの最後の方で流してくれれば、ラストシーンのその後が「もしかして」と連想されて面白いのに、と思いながら映画観てましたが、それやるとラストの意味合いが180度変わってしまうから、やっぱり無理か。
 こいつ何言ってるん? ということばかり書いてすみません。
 満足した点から。
 まずこれまでのクレイグ版ボンド作品すべてが本作でひとつになったのが凄い。Mr.ホワイトが再登場し、『カジノ・ロワイヤル』『慰めの報酬』でボンドが尻尾を掴みかけた犯罪組織クォンタムの正体がついに描かれました。
 タイトルのスペクターを始め、様々過去作への言及があり、特に上記の通り『女王陛下の007』は作品全体としてかなり意識して作られていたのがよくわかりました。『女王陛下の007』の裏返し的リメイク、と言っていいかと勝手に思ってしまうほど。
 前作から新登場の新M、Q、マネーペニーらとのやりとり、特にQとのやりとりはたまりません。終盤彼らがチームとして一丸になって行動するのがまた盛り上がります。これまでにない展開です。
 次に不満点。
 偶然要素が多過ぎ。たまたまうまくいった、という展開に助けられ過ぎです。特に終盤マドレーヌ救出に奔走するのは、時間が短いのだから何か考えて動かないと。そのための伏線みたいなものも必要だったでしょうし。
 もうちょい掘り下げて欲しい要素がありました。ボンドとフランツの過去。わかってるんです。前作『スカイフォール』が重すぎたと批判されたので、今回はもっと原点回帰して娯楽作らしい軽やかさ・明るさを押し出そうとしたのだと思います。そのためには過去の因縁話はあの程度にさらりと流した方がいい、と。事実その点を高く評価して、本作がクレイグ版で最高傑作だとの評価をされている方が多い印象を受けています。
 要は、このシリーズに何を求めるかだと思います。よく聞くのが、もともと007シリーズはお気軽なアクション娯楽大作なのに、あんまりシリアスに重たくしてしまってどうする? というご意見。それはそれで僕もよくわかるんですが、この長寿シリーズは、時代ごとに、主演俳優ごとにたくみにテイストを変えてきたことが長く愛される最大の理由だと思うんです。とするなら、クレイグ・ボンドはシリアスで現代的であることにこそ最大の特徴があった訳で、上手にバランス取るのも大事でしょうけど、そこはとことん突き進んで欲しかったなと個人的には思います。
 しかし、本作が素晴らしいということに異論はありません。ある意味驚愕のラスト。「これでクレイグ・ボンドは最後では?」と囁かれるのも頷ける、主人公の選択。これでダニエル・クレイグがボンドから卒業し、新たな俳優でまたいちから新しいテイストのシリーズが始まれば素晴らしいと思います。もちろん僕はクレイグ版のシリーズが大好きですが、それもひとつの道だと思います。何より、この終わり方では次新作を作られる方は続け方に頭抱えるでしょう。フランツ・オーベルハスザーを演じたクリストフ・ヴッアルツは続いての出演を完全に否定はしていませんし、ヒロインを演じたレア・セドゥは続けて出られるなら喜んで、という趣旨の発言をしているそうです。この二人が揃って続投なら、そして再度サム・メンデスがメガホンを取るなら、クレイグ・ボンドもまだ続けようがあると思います。

 もうちょっと、関連で次回も話続けます。長くなったので今日は切ります。