映画『人生スイッチ』

 6話からなるアルゼンチンのオムニバス映画。
 各話に関連はないが、いづれも何らかの「怒り」が限界を超えた人物の「スイッチ」が入り、一線を越えてしまったら… というお話。
 コメディだが、正直僕個人は笑えない話が多かった。相当な濃味。これが国民性の違いかなあ、とも思うが、いやアジア人日本人だって大喝采・大笑いできる人もいるかなとも思う。つまり、ノレなかったがすごくよく出来た映画だということはとても判った。
 現実に、ここまでイキきることなんてできない。行ってしまったら当然犯罪者。そのイキっぷりを見て、喝采するもよし、戦慄するもよし、身につまされるもよし。それに、無茶苦茶やり過ぎなのだけれど、それが下手にハッピーエンドに持ち込まれるときっと鼻白んでしまうだろう。実際そういう無理のある安手のラブコメも多い。そこをご都合主義的に「めでたし」に持ち込むことなくイキきってしまうところに、この映画の凄みというか、新しさというか、そんな何かを感じる。
 第一話の、「どうやらこの偶然は偶然ではないらしい」ということがわかってくるくだり、冒頭から引き込まれた。第三話、ドライバー同士のアホ喧嘩の成れの果てには不謹慎ながら思わず吹き出してしまった。ここで「不謹慎ながら」と思ってしまう辺り、僕の資質があまりこの映画に向いてなかったところかもしれない。
 しかし世界にはいろんな映画があるもんだと思った。またいろんなお国柄があるもんだなと思った。ノレなかったとはいえ、観て良かったと思えた映画。こんな感想に至ることもあるんだなあ。