まだまだ伸びしろがある? 007(続)

 ということで、続いて新作映画の動向。
 次回作制作発表があって以来すっかり興奮しているが、人と話していると意外とこの新作の『スペクター』というタイトルに含まれた興奮のタネを知らない方も多くて、そりゃそうだよなあ、古いシリーズなのだから、その初期から全部知ってるのはコアなおたくだけだよなあ、と気づいた次第。
 スペクターというのは、原作及び映画シリーズ初期の作品でお馴染みの敵。つまり前述の小説新作シリーズとは逆に、映画では原点回帰という魅力を帯びているようなのだ。
 スペクターは世界的な犯罪組織で、エルンスト・スタブロウ・ブローフェルドという謎の人物がその頂点「no.1」と呼ばれている。映画では一作目からこのスペクターとブローフェルドが敵であり、シリーズの進行とともにブローフェルドにボンドが迫っていった(3作目を除く)。ただ小説『サンダーボール作戦』の権利問題が裁判化し、ブローフェルドは死んだような、いや逃げ延びたかもしれないような状態のまま、映画ではブローフェルドやスペクターを登場させられなくなっていた。一度だけ『ユア・アイズ・オンリー』冒頭でそれらしい人物がやっつけられる場面があるが、あくまでパロディー的扱いだった。
 時は流れ現ダニエル・クレイグ・ボンドになったとき、新たな世界的犯罪組織の存在がにおわされ、『慰めの報酬』でそれが「クォンタム」という組織らしい、という処まで判明していた。が、次の『スカイフォール』では全く違う敵との闘いが描かれたので、僕はてっきり「前作があまり評判よくなかったから、クォンタムという敵はなかったことになったのかな」と思っていた。
 ところが。新作タイトルが『スペクター』と発表され権利問題が解決したことが判り狂喜乱舞したのに続き、『カジノ・ロワイヤル』及び『慰めの報酬』で「クォンタム」幹部として登場していた「ミスター・ホワイト」も再登場するらしいという情報も発表されるに至ると、どうやらスペクターとクォンタムには繋がりがあるのではないかという憶測を含んで興奮は最高潮に達するのです。古くからのファンは。
 お分かり頂けたでしょうか。これがもうひとつの「伸びしろ」です。もうなくなったと思っていた、シリーズ初期の設定と、新シリーズで展開しつつあった設定との融合。一刻も早く新作が観たいと思う心理、ご理解下さい。