スタンダードとは上質のこと

 Pen and message.吉宗さんが、スタンダードこそ大切という文脈でペリカンの定番万年筆M400を勧めておられます。http://www.p-n-m.net/contents/narration.html
 プロ中のプロが初心者に推薦するという立場から、初心者こそスタンダードを注目すべき、というお話は説得力があります。またその視点から思想のない限定品の乱発に批判的な目を向けておられるのも必然的だなと思いながら読みました。
 が、ただのシロートの自由な立場なら、また少し違った視点も。僕は素人がある世界に入っていく契機が、例えば万年筆の装飾ばかりに趣向が凝らされたような限定品から入るというのは全然ありだと思います。芸術全般でも生活品でも嗜好品でも、奇をてらったようなイレギュラーなものから入って一向構わない、と。行くところまで刺激を過剰に求めて行ってじきに飽きてしまうこともあると思います。それならそれだけの縁。心配しなくても、縁があれば何れスタンダードに行き着きます。万年筆でも、映画でも、ウィスキーでも、ジャズでも、僕の場合はそうだったと思います。自分で思っているだけで、未だ全然落ち着いてなどいないのかもしれませんが。
 ただ、僕が大事だと思うのは、最初に上質なものに触れること、だということです。初心者には本当の良さは分からないから、最初は肩肘張らずにほどほどのものから、というご意見はよく聞きます。確かに経験を積まないとわからない奥深さが、どんな世界にもあります。それは初心者には分からない。でも、よく分からないが何かすごいぞ、という「ひっかかり」のようなものはあると思うんですね。もし「そこそこ」のものを初めて体験して「なんだこんなもんか」で終わってしまったらそこまでですが、わからんなりになんか「ひっかかる」ものがあれば、しめたものです。文楽だとか、フェリーニノの映画などが、僕にとってはそういう体験でした。
 書いてて気づいた。なんか以前からしょっちゅう同じようなこと繰り返し書いてたような記憶が蘇ってきた。そしてもうひとつ気づきました。上質なものというのは、往々にしてスタンダードなものなのですね。なんだ、結局結論は吉宗さんと同じか。当然です。この世界で全国に支持者がいるプロの言っておられることなんだから。