いまのすべては

 年末に観た『かぐや姫の物語』についてやっと書けます。
 すごく賛否わかれているようで。
 世間的にも、同年公開の『風立ちぬ』に観客動員数で大きく水をあけられているそうですね(『風立ちぬ』の方が分かりにくい作品だったという印象があるのですが)。高畑監督、つくづく「ニーズ」というやつからソッポ向いてる人ですね。偏屈という点では高畑・宮崎両氏とも負けませんが、偏屈のベクトルは二人随分違う気がします。ここまで商業性を度外視する人は、それは否定もされるでしょうが、そんな人もいて欲しいと個人的には思ってしまいます。
 まず絵。好きです。ここがまず賛否分かれるところですが。「手書き風」だけ言えば海外にもあるのでしょうが、それが日本の古典と結びついて無二の作品に昇華しました。
 ストーリー。原典との差異に、監督の意図があるのでしょう。「姫の犯した罪と罰」というキャッチコピーは、全く別の期待を観客に持たせてしまうようで好きではありませんが、確かに「そこ」(何故かぐや姫が地球にやって来たのか)にこそ重点があったのでしょう。自然の中で、喜怒哀楽を精一杯抱えながら懸命に生きることは、決して稀しいことではない。決して目新しいテーマではないのでしょうが、強く胸に伝わりました。
 それを端的に表現したのがエンディングの歌です。これだけ聞いていたのと本編観終わって聴くのとで、大違いです。深く心に染みます。いまのすべては過去の全てであり、同時に未来の希望である。そう信じて、愚直に歩んで行こうと思わずにいられません。
 今観れば、もっと泣き所多かったと思います。