「ドルチェ・ヴィータ」

 イタリアの万年筆メーカー「デルタ」の「フェデリコ・フェリーニ」というペンの修理が上がった、とⅠrさんから連絡をいただき、受け取りに行きました。
 万年筆に興味を持ちだした頃に買ったものです。フェリーニは大好きな映画監督ですし、このペンのキャップトップにつしらえられた飾りがたまらなく魅力的でした。映画フィルムを模ったフレームに、フェリーニの作品から『ジンジャーとフレッド』『甘い生活』『道』の一場面を埋め込んだ大変精巧なもの。まるっと太めの軸もいい感じで、唯一書き味が固いというか軽いというか(筆記具としてはそこが一番肝心やんけ。いい悪いではなく合う・合わないの話ですが)。
 買ってすぐは使っていましたが、他のものとローテーションして間があくうち、このペンの特徴である「レバーフィリング」というインク吸入方式のために内蔵されたゴムチューブが劣化しているのではと思うようになり、使うのが怖くなっていってしまいました。そうして年月が過ぎますますチューブ劣化は確信的となっていくのですが、一方で最近この万年筆をもう一度使いたいという思いも強くなり、Ⅰrさんに持ち込んで修理を依頼したという次第。
 無事チューブを交換して貰い、再び使えるようになりました。ボディにちりばめられたカラーから、オレンジ色のインクを入れました。僕からのメモや手紙がオレンジ色のインクで書かれていたら、この万年筆で書いたんだなと思って下さい。

 ちなみに「レバーフィリング」というのは、胴軸のレバーを持ち上げて中のチューブをぺちゃんこにし、インク瓶にペン先を入れてレバーを戻すとチューブがふくらんでインクを吸い込むという、古風な吸入式です。写真、ボケちゃって見づらいですね。
 もひとつちなみにこの文章のタイトル「ドルチェ・ヴィータ」は、デルタの代表的な万年筆シリーズの名。オレンジの軸色が印象的です。ドルチェ・ヴィータというのはフェリーニの『甘い生活』の原題です。後にこの「フェデリコ・フェリーニ」が出たとき、僕個人的にはこのペンにこそ「ドルチェ・ヴィータ」と名付けて欲しかったところです。デルタはこの映画が余程お好きらしく、更に後には『甘い生活』の撮影舞台となった通りの名前にちなんだ「ヴィアベネット」というのも発表しています。これも素敵な軸。イタリアの万年筆のデザインって、独特のセンスがあります。今は書き味のタイプでドイツのものを手にすることが多いですが。日本製の万年筆は、それ以上に。