009 ②小説『サイボーグ009完結編 2012 009 conclusion GOD’S WAR』

 これは、読む事がまた闘いでした。原作者石ノ森章太郎の、筆者小野寺丈の、生みの苦しみをそのまま反映したような辛さでした。実際には素人の小説ですから読みにくいのは当然で、石ノ森章太郎萬画でのネームでの個性の強い文章そのままで、これが長文になると大変読みにくいです。また明らかに日本語のおかしい処も多く、これは出版社側の担当者がチェックしなかったのか、とも思いました(それとも小野寺氏が遺構を尊重したいとあえて通したんでしょうか)。小説を読む楽しみは、ストーリーを楽しむとほぼ同等、文章そのものを味読するところにあります。何度途中で投げ出したくなったか。それでも、絶対最期を見届けるのだ、という強い思いに引っ張られて、かろうじて読了できました。
 随分悪く書きましたが、先にも述べたように文章がマズいのは当たり前であって、それを遥かに越えて、これを完成させたことに大きな意義があるのですから、読者は我慢してでも読み通さねばなりません。
 文章が読みにくいとか、あまりに残酷な展開・描写であるとか、いろいろと辛いところはありまするしかしね「神」の正体、またその神との決着のつけ方は、この作品らしいなとつくづく感じました。文庫解説だったでしょうか、言及されてたと思いますが、石ノ森章太郎にとっての「神」とは、(神秘や抽象概念ではなく)あくまで科学的な存在=ここでは異星人。というのが、前述のアニメ映画版の解釈と好対照で、大変興味深かったです。
 ただ、大切なテーマであるところの、「正義とは」「この人類が生き残ることに与していいのか」といった問いかけが、少し薄いというか、扱いが軽いというか、そんな印象を持つのです。?章が駆け足過ぎたためでしょうか? 「誰がために?」という句は確かに出てきましたが、真にそこに踏み込んだだろうか、という懐疑が残ったのです。そこの苦悩こそが本作にあっては大切だと思ったのです。そこを悩み抜いてこそ、最後の決断が感動的なのではないか、と。
 ハッピーエンド的な印象をもたらすエピローグは読み手の好みで評価は分かれるでしょう。僕などはなくても良かったかとも思いますが、あのエンディングがあると、その後にテレビアニメ第2シリーズのエンディング曲「いつの日か」が流れてきそうで、これはこれで感慨深いですね。(つづく)