バットマン映画

 『ダークナイトライジング』観ました。過日ぬんちゃく君と散々語らったのですが、あの大団円は素晴らしい! しかし「おしい」とこだらけの映画でした。「こうすればよかったのに」「ああすればよかったのに」という話が尽きなかった。世評でもどうしても前作『ダークナイト』と比較してしまう論調が多いようです。
 それでも僕は好きです。そもそも監督のクリストファー・ノーランの、頭でっかち気味でしばしば穴のある、という作品群が好きなのです。奇跡的に(?)完成度の高い『ダークナイト』『インセプション』に限らず。
 メカ類のデザイン、あの、機能性を追求するあまり、全くヒーローもののメカとは思えない不細工なデザインに象徴的なように、あくまでリアリティ重視。というのが、アメコミファンの方には徹底的に不評なのがノーラン版バットマン。旧シリーズを称揚せんがためにこのシリーズをこきおろす論調をよくよく目にしますが、狙いどころが全く違うのですから、それぞれの良さを楽しんだらいいのに、と思ってしまいます。
 もちろんティム・バートン版の旧二作、僕も大好きです。完全に自分の世界にしてますよね。特に二作目。映像作家としての格、と言いますか、ゴッサムシティという作品世界の作りこみだけでも凄さが際立っていました。もちろん人物造型も。変人対変人。異形への偏愛。と書くと本当に月並みになってしまいますが、バートン映画の快楽ですね、これは。
 更に言えば、世評極めて悪い旧シリーズの後半、監督がジョエル・シュマッカーになってからの二作だって結構僕は好きなのです。「お前要するに何でもええんかい」と言わんとって下さい。いや、もしかしたらそうなのかもしれませんが、とにかく作り手の個性が濃厚に刻みつけられていると、そこを楽しまないとソンだとは思います。シュマッカー版の、バートン・バットマンの世界を継承しつつも極彩色に彩られていったゴッサムシティ。なんでチクビが付いとんねん、着替えるたんびに尻ぷりん! て見せんでええし、なコスチューム。放出過剰気味な減らず口ばっかり言ってるイカレキャラ群。独特のファンタジー世界ではありませんか。ストーリーはだいぶショボいですが、ずっと突っ込みっぱなしの二時間は、これもまた浸る映画体験に他ならないと感じます。
 これだけ見事に監督ごとに違う世界観を見せるバットマン。この原作の器自体が懐深いのでしょうね。また何年かしたら、全く違ったアプローチの新バットマンシリーズが作られるかもしれません。そういう意味では「スーパーマン」などより「いじり甲斐」のある作品世界なのではないですか? 
どうかその来る日も、めいっぱい個性の発揮できる映像作家が楽しませてくれますように。