「ギムレットには早すぎるね」のギムレット

 チャンドラーの『ロング・グッドバイ』を読んで以来のギムレットファン、という他愛のない手合いですが、その小説通りのレシピというのは国内ではなかなか飲めないものでした。
 曰く、ジンとローズ社のライムシロップだけ、というもの。このローズ社のライムシロップが国内では扱われてなかったという事情と、件のシロップが甘すぎてこのレシピではとても・・・・という意見が多数派で、という事情とが相まって、今までこのレシピでのギムレットは飲んだことがありませんでした。そのかわり、と言うか、バーテンダーさんそれぞれの哲学によって作られたいろいろな味わいのギムレットを楽しむことができたのですが。最近になってこのローズ社のシロップが国内でも扱われるようになったとのことで、バー・オーガスタでさかきばらさんがこのレシピでのギムレットを作って下さいました。折しも村上春樹訳版マーロウシリーズ第三弾『リトル・シスター』を読み始めたところ。
 シロップそのものも味見させて下さったのですが、やはりこのシロップそのものの風味が支配的でした。後味にかなり強い甘みが来ます。個人的な好みでいうと他に好きなギムレットもありますが、小説好きとしては、「これがマーロウとレノックスが飲んだギムレットか」という感慨は大きいですねえ。甘さに脳内イメージのほろ苦さを重ねて、ふたりの男の「長いお別れ」にしばし思いを馳せたのでした。