『ファン・ボーイズ』と『ファントム・メナス』

 またスターウォーズの話で恐縮ですが。
 『ファン・ボーイズ』は面白かったですね。スターウォーズマニアの大人になりきれない青年(をちょっと過ぎた男)たちのお話。時はエピソードⅠ『ファントム・メナス』公開を半年後に控えた頃、昔馴染みのひとりが余命いくばくもないと知り、命のあるうちに何としてもスターウォーズ新作を見せてやるため、ルーカスの本拠地であるスカイウォーカー・ランチへの侵入を決行する・・・・。
 湿っぽさは微塵もなく、バカ満載のロードムービーであり友情物語であるけれども、何よりスターウォーズ愛に満ち満ちている。全編パロディとくすぐりネタ。スターウォーズ出演者の特別出演にとどまらず、「宿敵」スタートレックからまでアノ人が登場。このスターウォーズマニア対スタートレックマニアの対立も、あほくさくて笑える。
 
 僕にとって、映画原体験がスターウォーズ第一作冒頭だった。それまでにも勿論映画館で映画は観ていたけれど、開巻いきなり頭上を駆け抜ける敵戦艦が、いつまで経っても通り過ぎない! 思わず身をすくめ帝国軍の強大さを一瞬で思い知ったあの瞬間から、もうスターウォーズこそ映画、であった。あれが10才小学5年生のとき。以来3年かかる次作公開を待ちわびて生きてきて、高1のときに一端完結。これが全9作構想の真ん中の3作で、次に前の3作、その次に後の3作を製作するとは言われながら、さて本当に実現するものか、はたまた最後まで完成されたとき、大人になった自分は変わらずこのSFを追っかけてるのか、と漠然と考えた。
 音沙汰もなく時は流れ僕は大人になり、突如新作に取り掛かるとの知らせ、そしてその前哨戦として旧3作を全面リニューアルして随時公開する、と知った時の興奮! そして旧作完結から実に16年後の1999年、新シリーズの初作『エピソードⅠ ファントム・メナス』の公開を迎えるに当っての未曾有の期待と不安! などといくら言葉を費やしても、これは同世代人にしか判らないのだろう。公開第一週の日曜日に、万難を排して映画館の座席に座り、懐かしい、そして変わらぬあのタイトル・ロゴとファンファーレが始まった瞬間のあの興奮も。
 それを、この『ファン・ボーイズ』は見事に映し出していたのだ。お祭騒ぎで映画上映を迎え、始まったその瞬間に主人公が漏らした「でも、もし駄作だったら・・・・」の一言! 紛れもなくあれば僕であると感じ、そして世界中に同じようなおバカがいるのだと理解した。それだけで、このもしかしたら何と言うこともないのかも知れない映画は、僕にとって特別の一篇となった。さて、何度目かの全作通し鑑賞をこの夏に敢行しよう。時間は、なんとしても捻出する。