「レスラー」

 観に行けて本当に良かった。
 パンフレット中にある「プロレスラーはキリストである」という言葉。これに尽きると思う。事情を知らない人が見たら目を剥く表現だけど。これは、評者町山氏の独断でも何でもない。明らかに映画の作り手も意識しているのだということは、作品を一度観ればハッキリわかる。この点で、ついあの名作「暴力脱獄」をだぶらせてしまったりもする。
 この主人公の生き方を「カッコいい」などという言い方をするつもりはない。どうしようもなく、残された道を辿ったのであり、自ら選択した生き方ではない。でも、それだけに「これしかなかった」生き方であり、憐れむよりはある種の羨ましささえ感じる。オレの生きる世界はここしかないんだ。男には、そんな世界が必要なのだと思うから。
 ミッキー・ロークにもマリサ・トメイにも、惜しみない拍手を贈りたいと思う。無論、監督のアノロフスキーにも。