「それでも恋するバルセロナ」

 ウディ・アレン監督作品にしては珍しく、本作は比較的メジャーな扱い。出演者が豪華だったからかなあ、とも思うけれど、アレン作品って結構いつも役者は豪華だったような気も。それなのにいつもは2〜3週間しか上映してくれないし、上映館は少ないし・・・・それに比べて今回は普通の映画扱いしてもらってる。それだけに、ごく普通のハリウッドラブコメのつもりで見にきて、「なんじゃこれ」と帰る「被害者」も出るのではないかなあ・・・・などと余計な心配をしたりして。
 なかみはいつものアレン節です。洒脱なユーモアの中に、強い皮肉が隠されている。ふたりの女性がひとときの異国での体験を経て、結局はもとの処へ戻って来ました。と取ると身も蓋もない話に思えるでしょうが、ラスト、決してふたりは振り出しに戻った訳ではありません。「行く川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」ではないですが。もう以前と同じように無邪気にものごとを見ることはできないでしょう。
 それにしても、女三人男ひとり(一応、ふたり?)のあれやこれやは、考えさせられることのオンパレード。殊に女三人何れも個性強烈ながら、過度に感情移入することなく共感させられます。結婚って、なあ・・・・なんて。特に僕自身はあの平凡な、ヴィッキーの夫ダグに一番近い。どうしたって妻のことを考えてしまう。
 役者が豪華と書いたけれど、豪華なだけじゃなくて絶妙なキャスティングだと思います。中でもやはりスカーレット・ヨハンソンペネロペ・クルスの激突は見事。ここだけでも一見の価値あり、です。
 それにしても、最近のアレン映画の邦題は、どうしていつもこんな、ええ歳した男がチケット買うのに躊躇するようなのばかりなのかな。近年のなんでも原題をカタカナにしただけの風潮の中でちゃんと邦題つけようという姿勢は買うけれど、それにしてももうちょっとなんとかならないのでしょうか。「タロットカード殺人事件」然り、「スコルピオンの恋まじない」然り・・・・。なかみは大好きなのだけど。