バーのマスターは

 実にいろんなバーがあって、殊に日本のバーはそれぞれ個性を持っていると本場の国の批評家も書いておられるようですが、本当にその通りだと思います。バーのマスターには個性的な方が多く、その個性と思想から、お店の品揃えも雰囲気もサービスの手法も本当にいろいろ。だからそんな中には合うバー合わないバーがあるというのも事実でしょう。
 面白いのは(これも本場と大きく異なる点だということですが)、バーのマスターは他店を積極的に客に薦め、ご自身も時間と機会を見つけては積極的に他店に出向くということです。バー・メインモルトのマスターが今年からお店の休みの日を火曜日にしたのも、多くのバーが日曜定休で自店が休みのときは他店も休みだから飲みに行けない、という理由ですから。だからもしかしたら火曜日に北新地の某店や梅田の某店で、お客さんになっている後藤さん(バー・メインモルトのマスター)と隣り合わせになる、なんていう機会に恵まれることも、あるかもです。
 某日、バー・ハーバーインに居ると、入って来られたのは品野さん(バー・オーガスタのマスター)ご夫妻でした。ちゃんと僕のことも覚えて下さってました。さらりと飲まれて、ご自身のお店に向かわれました。どうにもオーガスタのグレン・モーレンジが飲みたくなって、翌日にはバー・オーガスタに行ってしまったのですが。僕は本気でウイスキー目当てでバーに行くような人間ですが、そんな奴でもやっぱりバーに行くのはマスターの顔を見に行くものなんですね。それがバーというもののようです。
 ちなみにハーバーインではバックバーに出していない「マイケル・ジャクソン スペシャブレンド」というのを飲ませていただきました。このマイケル・ジャクソンはもちろんアノ歌手ではなく、一昨年亡くなったウイスキー評論家のマイケル・ジャクソンです。自宅にあった膨大貴重なウイスキーブレンドした1000本限定の代物です。日本のやバーボンも含まれるらしく、ちょっと不思議な風味、でもものすごくバランスのいい仕上がりになってました。オーガスタではウイスキー・ソサイエティの新しいグレン・モーレンジを頂きましたが、厚みのある、実に旨いモーレンジでした。