バーでの過ごし方

珍しいリキュール

 過日ひさしぶりにbar harbour innへ。いつものごとく開店早々なので一番客です。久し振りのharbour innだからこの日はボウモア・デーにしようと思って、まず目に付いた「カスク&シスル」の16年を。いわゆるパフュームっぽさが抑え目でいてしっかりすっきり、で、なかなか。次にオフィシャル現行の18年。ややシェリーがかっててこちらは優しい味。えらく違うもんだ。で、次はちょっと古いのを飲んで切り上げようと思ったら、あるボトルが目に付いた。アイラ島に新しくできた蒸留所キルホーマンのラベルが貼ってあります。でもキルホーマンはまだ若干のニューポットしか出してないはずなのに、このボトルに入っている液体は随分と濃い色合いをしている。マスターに尋ねてみると、常連のお客さんがアイラ島に行ったお土産に買って来られたリキュールとのこと。まだ熟成させたモルトがないのでこの蒸留所のお土産といっても酒とは関係ないグッズばかりだそうですが、かろうじてこのリキュールは、他所から買い付けたスピリッツも混ざってるとはいえ一応酒なので、ということらしい。せっかく目に付いたのだから飲ませてもらいました。ただ甘いだけでなく、ちゃんと後口にはアイラのモルトらしい風味が残ります。こいつは土産物なので、さすがにどこのバーにでもある代物ではないでしょう。
 なんで珍しく3杯も飲んでたかというと、途中から酷い雨が降ってきたから。僕が3杯飲む間に常連さんがお三方次々と来られたのだが、みなさんズボンをえらく濡らして入って来られた。
 このお三方がそれぞれバーでの過ごし方を持っておられる。僕の次に来られた年配の方は、何も言わなくてもカクテルが出て来た。情報通の方らしく、梅田のいろいろな飲食店の情報をぽつりぽつりと喋っておられた。次の方は「1杯目はハイランドパークが引き立つような、辛口のウイスキー」というご注文。あくまでクライマックスはハイランドパークなのだなあ。マスターはコンパスボックスのブレンデッドを出しておられた。僕なんざ思いつきの行き当たりバッタリだ。よく長熟のしっかりしたのやとてつもなくピーティなのの後に軽いのや熟成の浅いのを頼んでしまったりする。大抵は「これを頼もう」と1杯目くらいは目星をつけて出陣するのだけど、実際にはマスターや他のお客さんが薦めたり旨がったりされてるのを飲んでしまう。まあそのお陰で知らなかったスグレモノと出会えたりするのだから、これこそバーの醍醐味なのだろうけれど。
 僕が切り上げると隣のお客さんが「こう降ってると出たくないでしょう」と声を掛けてくださった。マスターがちょっと店のドアから顔を出して外の気配を伺って、「だいぶ降りは収まったようですよ」と教えてくださった。他のお客さんが「まだ降ってたら遠慮なく戻って来たらいいですよ」と笑われた。どなたも存じ上げない方だけど、そうやって仲間のようにして下さったのがなんだか嬉しかった。

 そうそう、サントリーモルトラリーの景品の、熟成樽材を使ったボールペンも頂きましたよ。これ、リフィルが交換できないのがなんとも惜しいよなあ。