やっと読みました 藤原伊織『テロリストのパラソル』

前略 ソノベ先生。
 僕が高村薫にハマっていて『リヴィエラを撃て!』を賞賛していたとき、控えめに薦めて下さったのが『テロリストのパラソル』でしたね。こんなにも経って、ようやく手を伸ばしました。そしてあっというまに読んでしまいました。
 読み始めてすぐに、薦めて下さった理由が判りました。作品が醸し出す雰囲気がそっくりでした。僕は確かそんなに詳しく『リヴィエラを撃て!』の説明をしなかったと思うのですが、びっくりするくらい地続きの部分を感じました。そして、これは紛れもなくソノベ先生がお好きな作品だろうな、とも思わずにはいられませんでした。全共闘時代を生きた主人公、それがごていねいにアル中ときましたか。この主人公はソノベ先生に演っていただかないとね。(出版されてすぐドラマ化されたということは読了後知りましたが。)
 主人公はもちろん、あらゆる登場人物が際立っていましたね。特にやくざの浅井。あんな格好いいやくざは知りません。主人公とこのやくざの二人が、作品をミステリーでありハードボイルドたらしめていました。展開もタイトで、出来事や人物に全くムダがなく全てがラストに収斂する。まあ、重なりすぎた偶然に無理を感じないではないのですが、それを言ってはおしまいでしょう。藤原伊織は他も読んでみます。
 しかし、主人公がずっと飲んでたウイスキー、何だったんでしょうね。銘柄が出てきたのは唯一、ホテルでおごってもらってたバランタインの17年。本人の口から「アルコールが入ってれば銘柄は何だっていい」というようなことが言われていましたから安いのを手当たり次第飲んでたんでしょうが、でも端々で実はそれなり好みの銘柄はないではなかったような気も・・・・。
 半月ほどに迫った先生の命日、例年通り独りで一献捧げることは変わりありませんけれど、今年は冷やした角でもご一緒に如何ですか?