映画「グラインド・ハウス」

カッコいいんだこれが

 グラインド・ハウスというのは日本で言うところの2番館3番館といったものに近いとか。B級映画抱き合わせ、みたいなのばっかりやってる場末の映画館という雰囲気を再現させようということでクエンティン・タランティーノロバート・ロドリゲスが組んで企画したのがこの「グラインド・ハウス」。ロドリゲスの「プラネット・テラー」とタランティーノの「デス・プルーフ」、そしてうそっぱちの予告編4つから成る二本立てが、日本では別々に公開された。僕は劇場公開を見逃していたのでDVDになるのを楽しみにしていたというわけ。
 どっちもいかにもロドリゲスらしく、タランティーノらしい。あんまり「らしく」て笑ってしまう。好みで言うとタランティーノ。お得意の「延々続くムダなお喋り」が今回はあんまりオモロくなかったので若干冗長に感じたけれど、クライマックスのど田舎で繰り広げられる凄絶なカーアクションとスタントは超のつく値打ちものです。そしていきなり終わる身も蓋もなさに大爆笑!
 ロドリゲスの方は本来苦手な超グロテスクなゾンビもの。でもこちらも徹底的にアホ。ポスター画くらいはどなたもご覧になったことがあると思うがエロいねえちゃんの右足がマシンガンになってるやつ、あのアホらしさが象徴している。あのポスターから想像される世界を一歩も裏切ることなく展開されるおバカ大アクション! 同監督の「レジェンド・オブ・メキシコ」ですっかり気に入った世界。
 どちらも(特に真性B級オタクのタランティーノ)映画オタクが作ったこと、その愛情がよく判る、いくつもの古い作品の引用や暗示が散りばめられているから、それらを知ってるほどより楽しめたろう。グラインド・ハウスの再現、というところにこだわり過ぎてややあざとくなった嫌いの強いロドリゲス編の方がちょっと無理している観もあるが、ノリはこちらの方がより幼くてそれはそれでご愛嬌。全編がいわば相当に手の込んだパロディみたいなものだから、ばかばかしさに覚悟も免疫もなくまじめに観に行って怒って帰っちゃった客もいたんじゃないかと心配してしまうほど、見事に愛すべきアホ映画二編でした。