小さい店が好き

 腕時計の革ベルトがもうずたぼろで、交換しようと思った。ずっと革ベルトだったのだけど一度金属ベルトにかえてみようと思った。いつもベルト交換には、律儀に買った店に行っている。某デパートの時計売り場。前回ベルト交換した時にオーバーホールを薦められていたので、今回はそれも頼もうと考えていた。でも持っていくと、口にこそ出さないが「こんな古いもの持って来られても」という困惑が隠せない店員。時計はもう10年以上使っているセイコークレドール。採用試験に受かって本採用になった時にちょっと思い切って買ったもの。他人には、時計好きを自任する男性にも女性にも取り立てて注目されるようなものではないけれども自分では気に入っていてまだ当分は使うつもりでいるもの。「金属ベルトだと純正品でないといけないので在庫はなくメーカーに問い合わせてみなくては」「お値段は3万円くらい」「オーバーホールも問い合わせてみないと何とも言えないが2〜5万円と物によって幅がある」「何れにせよ年内の納期は無理かと」といった内容の説明で、なんともハッキリしないし第一やたら高くつきそうなことばかりアピール。もういいやと思って帰ってきた。
 職場でちょっと喋ると上司が三宮の高架下の店を紹介してくれた。そちらに行って見ると、とても丁寧に応対してくれた。「正直言うとクレドールに金属ベルトを合わせるのは時計がもったいないですが」と言いつつ合う形のベルトをいくつか出してくれた。何れもせいぜい3千円代。オーバーホールも1万円代で請け負ってくれた。その場で時計の蓋を開いていろいろと現状を説明してもくれた。リューズのトップに付いていた筈のオニキスが取れていることも教えてくれた。これも技術の方に問い合わせて交換が必要かどうか確認し、特に作動に支障がなければこのままで行きましょうとも言ってくれた。知識豊富な方が、プロとしての本音も交えつつもあくまで客の意向最優先で知りたいことを教えてくれて、して欲しいことをしてくれる。お店はとっても小さくて、正直品揃えがいいとは言えない。でもここなら好みを言っていろいろと教えてもらえるだろうと思う。
 お店は小さい方がいい。主人が自分自身の手の回る範囲でやりくりしている店。扱っているものと自分の知識や技能に自信と愛着を持ってやっている。そういう店がいい。蕎麦屋の松林さん然り、酒屋の山本さん然り、万年筆の森山さん然り。デパートの店員さんは「留守番」みたいなもんだと思っていた方がいい、とどこで聞いたか。まあそれは一生懸命働いている人に失礼な言い方だけれど、そんなことを言われないためには余程勤勉に知識を蓄え客本意に接客に尽力せねばなるまい。そういう「いい店」はなかなか見つかるものじゃない。大切にしたい。ちなみにこの時計屋さんは、三宮の高架下(ピアザ神戸2)の「ウォッチ&メンテナンス」http://www.watch-mainte.com/

 ということで、先日教えてもらったカウンター8席しかないという宗右衛門町の居酒屋「てげてげ」にも、機会を見つけて行ってみなきゃな! (宗右衛門町1−21伊藤ビル1階1号)