団鬼六の随筆

美人を侍らせご満悦の先生

 作家団鬼六公式サイトhttp://www.oni6.com/内のブログhttp://oniroku.cocolog-nifty.com/blog/2007/05/post_364e.htmlで読んだ記事で随想集『鬼六あぶらんだむ』が無性に読みたくなって、サイト管理者でありブログ執筆者の雪谷さんにお願いして、一冊送っていただけることになった。早速送って来てくださった包みの中には同氏の『果たし合い』という随想集ほか僕がウケるツボを見事に踏んだ数冊の本が一緒に入っていた。随筆二冊とも読んでみて、すっかり夢中になってしまった。
 『鬼六あぶらんだむ』(勁文社文庫)は、筆者の出会ったちょっと特殊な性癖を持った人たちのお話。ほんまかいな! と思ってしまうような話のオンパレードで、よくぞこうも特殊な人がこの作家の周りに集まって来たものだと思う。あとがきで「ほとんど作り話ではない」とあるのでまるっきり実話ではないのだろうけれど、ちゃんとモデルに相当する人は実在したのだろう。逆に実在なればこそそのままでは書けないということかもしれない。
 団鬼六といえば『花と蛇』をはじめとしてSM作家というイメージが強い。作者本人は如何にや、と思いがちかもしれないが、これを読んでいるとむしろこの人自身は大変常識的な方だということが判る。作品と作者を同一視してしまうのは、いかにも幼稚な話だ。とはいえ、同時に破格な自由人という感じも伝わってくる。ひょうひょうとした文章はてらいもなくしかしユーモラス。何よりあたたかみがある。すっかり気に入ってしまった。
 続いて読んだ『果たし合い』(幻冬社アウトロー文庫)は、更にそれ以上に気に入ってしまった。こちらは将棋雑誌に掲載されていた随筆。筆者ご自身、将棋の指南役を雇ったり、斜陽の将棋雑誌を買い取って自分でプロデュースしたりと、相当将棋には入れ込んでおられるらしい。もちろん各話必ず将棋の話題が絡むけれど、将棋を全く知らなくても存分に楽しむことができる。各話とも趣向が違い、本当にひとを楽しませるのが上手いエンターテーナーなのだなと実感する。幕末の物語「駒くじ」などは、映像化したいななどと不遜なことを思ってしまったり。特にこの話が、と言えないくらいどれも気に入って、これはまた他の作品も読んでみないとなあ、とつくづく思った。困った。山田風太郎も真面目に読むぞと決めたところなのだ。ただでさえ読むのが遅いのに。どうすればいい?