バーンズ・ナイト

パブリック・バー・アイラ

 ロバート・バーンズという詩人については、スコットランドの国民的な詩人で、かの「蛍の光」の原詩の作者である、ということくらいしか存じ上げていません。誕生日が1月25日で、その前後にスコットランドでは盛大にお祝いをするそうで、これをバーンズ・ナイトというんですね。にほんでもスコットランドに縁のるところでは結構このお祝いをするらしいのですが、心斎橋のpublic bar islayというお店が26、27、28日の三日間バーンズ・ナイト記念としてスコッチウイスキーすべて半額、ということをするが如何、と紫さんに誘っていただいて行って参りました。店の名前からしシングルモルトの品揃えも期待できそう!(islayというのはスコットランドにある島のひとつ。幾つかの蒸留所がこの島独特の個性のあるウイスキーを造っていて、僕も大好きなのです。)
 ところが残念なことに紫さんはお仕事が忙しく、職場から出てこられそうにありません。僕は既に店の前まで来てしまっていたので、独りで入ってみることにしました。バーとしては割と広い店で、バーテンダーさんも若く入りやすかったです。カウンターに掛けるとすぐメニューを出して下さる。メニューがあるというのも始めて入った客にはものすごく安心できるもの。そして品揃えも睨んだ通りバッチリ揃っています。飲んだのは、①アードベッグ アリー・ナム・ビースト →②ノッカンドゥ21年 →③サマローリのコールテイン1965年 →④アードベッグ ロード・オブ・ジ・アイルズ。判る方にしか判らないですね、すみません。何れも「飲んでみたい!」と強烈に思っていたものばっかり。①は最近出た新しいアードベッグ。ビースト(野獣)という名の割にはおとなしい感じでそういう意味ではアードベッグらしくないのかもしれませんが、やはり風味はまぎれもないアードベッグで、これはこれで面白かった。②は家にスタンダードのボトルがあってもうあと一杯でなくなってしまうのですが、アードベッグのようなアイラ(islay)のモルトと正反対の性格の、後口にチョコレートの如き甘みの残るモルトで大変好きなんです。その21年ものですからさぞや、と思って含んでみると、意外と香りも甘みも開いて来ない。じっくり飲んでいるとおしまいの方になって俄然「らしく」なってきました。ああ、これはゆっくり飲むモルトなんだな、と思った頃には最後のひとくちでした。③のサマローリというのは馴染みのない名前かもしれませんがこれはブレンデッドのウイスキーで、やたら旨いと評判は知っていたもののネットで見ても結構高価で買うのに躊躇していたものです。これ本当に旨い! しっかりとした甘み。バランスの良さ。この日の豪華ラインナップの中でもここがハイライトでした。そして最後の一杯と決めて注文した④、これもアードベッグの中でも飲んでみたいと思っていたもの。25年熟成なんですね。バーテンさん曰くアードベッグの長期熟成ものとしてはコストパフォーマンスのいい品だそうで、30年ものが1本50万で取引されてたけどさすがにそれは買わなかった、とのこと。1本50万だと一杯幾らになるんでしょうね一体。
 長々とすみません。隣では常連らしい男性がひとり黙々とやってらっしゃいました。スコットランドの名物料理ハギスも召し上がっておられた。本来バーンズ・ナイトといえば欠かせない料理のようで僕も興味はあったんですが、なかなか手間のかかるもののようで遠慮してしまいました。
 紫さんには申し訳ないのですが、独りでのんだくれてしまいました。これで支払いが三千円台ですからね。笑いが止まりません。
 自分でも開拓したいと思って目をつけているバーがいくらかあるんです。また飲みましょう。