映画「007/カジノ・ロワイヤル」

クレイグ・ボンド

 いいじゃないか! 相当いい!
 主演がダニエル・クレイグと発表されてからファンからは大ブーイングで、僕も「実際の作品を観るまでは評価は下せん」と言いつつもかなり不安だったんですが。
 これはハッキリ言って別物です。全く新しい。そしてそれは原作に忠実である故。ここまで原作寄りにシフトチェンジするとは! まあ例えて言うなら「ルパン三世」で主役の声優を、山田康雄のものまねさんから思い切って全く別のハードボイルド系の人に変えるくらいの大英断ですよ。だから長年の映画シリーズのファンからは総スカン喰らうくらいの覚悟でやってますね。ちょっと興奮してて何から言っていいかわからないんですが、僕個人としては、偉大なるマンネリズムに付き合ってしょうもないと思いながらつい付き合ってしまうというのではなく、正にこういうのを観たかった、という作品です。リアリティがあって人間が描かれており、それでいてスリリング。シリーズの「お約束」を期待する向きには相当な忍耐を強いられます。いつも必ず冒頭にある「ガンバレル」のオープニングも、あの有名な自己紹介の台詞も、お馴染みのテーマ曲も、そして何よりジェームズ・ボンドらしい主人公の雰囲気も、いつまで経ってもも出てきません。でも待たされたぶん、目にした瞬間のカタルシスはもう!
 ダニエル・クレイグもいい役者ですね。ラストシーンで彼はようやく僕らのよく知っている「ジェームズ・ボンド007」になります。「らしくない」と散々言われたキャスティングも、こう来られるとお見事としか言いようがない。次作からはすっかり我らがボンドとなって活躍してくれるのでしょうか。しかし。しかしやっぱり、彼の顔は・・・・敵顔なんだよなあ・・・・。