新しいスーパーマン

新スーパーマン

 早速観に行くこの情熱は何なんだ。
 と自らに問うてみるも、結構面白かったですよ、新作。ブランドン・ラウスは雑誌でぎゃーぎゃー言うほどクリストファー・リーブにそっくりなわけではなく、なまじっか似た顔なばかりにかえって「あの人とは違うなあ」という感じがします。が、別に旧作と比較したいわけではなく、また役柄にはピッタリな顔立ちなのですからこれは大変結構なキャスティングでした。よく言えば育ちの良さそうな、悪く言えばボンクラな感じがまた結構。実写でもCGみたいな顔立ちは、これまたおあつらえ向きだったのでは。ただ古風なくらい整った顔なのでこれから「脱・スーパーマン」が大変でしょうね。この雰囲気で、物語の最後に「実は犯人は僕でした」みたいな役やったら観客はみんな騙されそう。実際、そんな役もやるかもね。対してロイス役のこの女優さんがインパクト薄いなあ。子持ちの突撃女性記者、という感じには見えない。レックス・ルーサーを嬉々として演じてたケビン・スペイシーは、過去作は意識しなかったと言う割りにすんなりとジーン・ハックマンが演じていたキャラクターとオーバーラップしていった。さすが。
 いきなり役者さんの話ばかりになりましたが、お話も良くできてたと思いますよ。旧作(1、2作目限定)をこれ以上ないくらいめいっぱいに活用したストーリー展開、そして演出。ちょっとしたサプライズまで用意してある。続編を意識しているような、していないような・・・・。クライマックスのヒーローの悲壮な活躍は、監督の過去作「Ⅹ−メン 2」に通じる。Ⅹ−メンの最終章はこの作品のために他人に譲ってしまったブライアン・シンガー監督ですが、できればあっちもやって欲しかった。というのは欲張りか。ブレット・ラトナー監督って、シリーズものの続きをよく受け継いではるけど、「レツド・ドラゴン」観た限りではそつなく仕上げるけどいまいち、という印象だものな。
 後ろに座っていた老夫婦が、終始声出して笑ってはるのね。オールドファンで旧作を彷彿させるところで思わずニヤリ、というのはファン心理としてよく判るのだけど、深刻な状況やシンとした場面でも「はっはっはっ」てずっと声出してはるもんやから、物語への没頭に著しく触る。あれはちょっとたいがいにして欲しかったな。
 あと、ロイスがピューリッツァー賞をとったという「ヒーロー不要論」というのが具体的にどんなものだったのか、もっと出てくると思ってた。そんな小難しいのはアクション映画には不要ということか。でもそのへんもロイス像をいまいちぼけたものにしてしまった一因かとも思うのだけど。
 とはいえ気分良く観られる娯楽大作です。残酷なシーンもないではないのだけど、あくまで爽やかに描いてますので不愉快な思いもいたしません。
 本当は、同じ昨日公開の作品でもウディ・アレンの「マッチ・ポイント」が観たかったのだけど。昨日公開というのは東京の話なのね。こちらは9月2日だって。アレン作品の常で、また短期間上映なのだろう。時期的に言っても、たぶんまた観られないな。くそ。
(こちら「なるほど」な評です。http://d.hatena.ne.jp/zeroes/20060816