対照的な女性作家

高村薫

 いまや日本の文壇は女性の方が元気なようで・・・・ などと大上段振りかぶるつもりはなかったのですな。
 我が高村薫の「照柿」文庫版がついに出たのですぐにゲットしました。合田雄一郎シリーズのちょうど真ん中、第二弾ですが、直木賞を獲った「マークスの山」と社会派と目される「レディ・ジョーカー」に挟まれて実に地味な存在。そりゃそうでしょう。映画化もされた両作に比べ、事件も地味。展開も地味。きっと多くの人が長い作品の中途で脱落したでありましょう。僕も正直読むのが辛かったです。が、実にこの作品によって「高村薫は凄い」と実感したのです。そして、この人は別に犯罪小説やら警察小説を書きたい訳ではないんだな、と気づいたのです。これ以前にも書きましたっけ? なんせそういう「高村薫という山に登る試金石」みたいな作品です。そしてお楽しみは高村薫お決まりの全面改稿。発表→単行本→文庫本、と、発表される度に必ず見直して徹底的に手直しする作家です。賛否あろうかとは思いますが、これまでの作品はそうして改稿される度に大きく姿を変えて来た。さて今度は、というのがファンにとっての最大の関心事であります。早く読みたい!
 ところで今読んでいるのは桐野夏生の「ダーク」。まあこの感想は最後まで読んだらきっと書くことになると思うのですが、作者の桐野さんは女の感性が前面に出てる作家さんだと思うのですね。対して高村さんは、極限まで自分の「女性」を理性で抑えつけている。それでもぼろっと「女」があふれてくるところがまた魅力なのですが、実に対照的な作家だと思います。面白いよなあ。どっちがいいか、とかどっちが好きか、とかじゃないんですね。既に桐野ワールドに相当惹かれてますからね。とにかく面白い。もっといろんな作家に触れて行こうと思います。


さて、終戦の日。コイさん。やりやがったな。