「シン・シティ」

ビジュアル的に渋いよな

 この映画のことを初めて知った時、監督がロバート・ロドリゲスであることに喜び、次いでアメリカン・コミックをセリフも構図もそっくりそのままに映像化したのだという解説に眉をひそめた。原作のある映画なら、それは原作と全く別物になってしまっている方が面白い。というのが僕の考えだというのは、何度かここにも書いてきた。原作と同じなのならわざわざ映像に置き直す意味がない、というのは少々言いすぎかもしれない。だが原作が好きであればあっただけ、原作の焼き直しには自分が構築したイメージを損なわれてしまうだけである場合の方が圧倒的に多いのが現実だ。ネタ切れの映画界である。評価の定まった作品のリメイクか、人気漫画の焼き直しで手堅く集客しようという志の低い作品が多いから、こういうことになるのだろう。
 僕はフランク・ミラーの原作コミックを知らない。この映画自体はなかなかいい作品だと思う。原作を先に知っていたら、評価は違っていただろうか。原作を読んでみたいと、すごく思う。帰りに大きな本屋を三軒まわったが、邦訳されているはずの原作は見あたらなかった(代わりと言っちゃナンだが、同じ作家が手がけた「バットマン・イヤー・ワン」というのを手に入れた。もうちょっとすると新作を含めたバットマンシリーズのDVDボックスも出るし、なんかイヤな予感がしとりますが・・・・)。ネットで探そう。
 バイオレンスがドぎつい。怖いのが苦手な僕には、少々ハードに過ぎる。でも、すごく魅力的だと思う。白黒だけで勝負したという原作の世界を忠実に映像化して、それでこれだけ個性的な映画作品になるのであれば、これは映画として大成功だろう。
 ハッキリとこれは「男の世界」だ。情報雑誌で「アート系映画」という紹介をされているのを見たが、相変わらずこうやって安易に若い女性目当ての宣伝を打って、結果「なんなんコレ」ということになって客を失うのだ。でも「キル・ビル」みたいな番長映画があれくらい売れたのだから、こういう作品もそこそこ客を呼べる時代になってきているのかも。第一作り手がロバート・ロドリゲスだ。ちゃんと売れることも考えてるだろう。ただし万人向けではないけれども。それは「レジェンド・オブ・メキシコ」でハッキリわかった。ある意味アホになって虚構世界を楽しめる人限定。それがロドリゲス味だ。なんてね。デスべラード・シリーズ三作とこの作しか知らなくて、大きな口はきけないか。
 でも、まちがいなく独特な魅力を備えた映画には違いないと思う。