映画 「ハサミ男」

二人の関係がポイント

 先週の週末は、いろいろと予定していたにもかかわらずあんまりにヘバッていたので結局体を休めることに終始していた。実は観に行きたい映画もいくつかあったのだ。
 今日は女子バレー部の試合で南海電車に乗った。帰りに新今宮で乗り換える。先週どうしようかなあと思っていて結局行かなかった映画がフェスティバルゲートでやっている。ものすごく短期間の上映のようだし、この機会を逃す手はあるまい。ということで観たのが「ハサミ男」。4/2の日記で原作小説の感想を書いています。
 正直、もうひとつだった。
 原作と別物にするのは良い。むしろそういう作り方の方が好きだ。殊にこの原作は、文章だからこそやれるトリックが仕掛けてあるので、普通にそれを映像化するとミもフタもない。それゆえ発表当初から「映画化は不可能」と言われていたそうだ。今作ではその「ネタ」を冒頭でバラしてしまうというやり方で原作小説と真っ向勝負。そして主人公の「ハサミ男」と(原作で言うところの)「医師」との関係の方にトリックの要を置いて作りこんできた。そこに、原作にもあった要素ではあるが、「父と子」というテーマを大きく取り入れることによって、監督独自の作品に仕立てている。
 と、ここまでは何の文句もない。とてもよい。でも、なんだかいまひとつ面白くない。監督独自のテーマというやつが人物造形に歪みを生んでしまったのか。なんだろう。
 ものすごく古い映画を見ているような演出と、本多俊之の音楽にかなり批判が集まっているようだが、かえって妙に新鮮味があって僕はオモロかった。役者も良い。豊川悦司麻生久美子も、とてもよかった。警察は全然警察に見えなかったけど。高村薫なんかで刑事・警官のハードでリアルな造形を見せつけられていると、あんなマヌケな連中はどっから見ても警察官とは思えない。あ、石丸謙二郎は良かったけどね。脚本、というか、台詞もリアリティに欠けたな。長い原作を短縮しなきゃいけないのはわかるが、説明台詞が多すぎる。誰が現実であんなこと喋るか。
 でもやっぱりラストが余計だな。主人公の「心の闇」に独自の解答を与えてみたものの(それこそが監督のテーマに直結しているのだが)、それによって「人間の暗部」を描くことに失敗している。と思うぞ。あんなこ理屈は要らん。映画の宣伝文句には「ハサミ男が本当に切り開くのはあなたの心の闇」とあるが、そんなもんに理屈なんてあるもんかい。作中に登場する「マルサイ」並にインチキ臭くなっちまう。闇は、闇なんだ。その点で、残念ながら原作に完敗だと思ったのだけど。原作を未読の方には評判がいいみたい。とすると、やっぱり僕も色眼鏡で評価してしまってるのかなあ?