小説「ハサミ男」

これは映画のスチル

 また「比較のムシ」が。
 雑誌で映画化の記事があって、読みかけて慌てて止めた。原作小説の「ネタ」は映像化不可能とされていた・・・・ それをあえて冒頭でネタばらしし・・・・ 豊川と麻生の息ピッタリの演技(←ネタばれ)・・・・ こんな記述が目に入ったら、本能的に読めなくなっちゃいますよ記事の続きは。そして俄に興味が湧いてくる。映像化できないというのはきっと小説「ループ」みたいなことなんだろうな、とは思ったけれど、とにかく原作を読んでみてから映画も可能なら観よう、と決める。
 で、東京に行く時に新大阪で買ったのです。ブ厚い文庫だったけど、結構すぐに読めてしまいました。なかなか面白い! あちこちのブログなんかを読んでみると「途中で判ってしまった」などと言っておられる人も多いが、僕はまんまと騙されてました。その「ネタばらし」が始まったあたりで愕然とし、ついで慌てて前の方をめくり直したのだから思いっきり作者の思うツボですな。うまいこと誘導されてました。確かにこれは映像にしたらミも蓋もない。ただ、この「ミスリード」だけの小説ではないのでちゃんと楽しめたのでしょうね。このネタがなくってもミステリーあるいは心理劇として成立しているからこそ映画化もされたのでしょう。で、その映画の方のワナについては、原作を読んだ上でキャスティングボードを見たらもうネタはわかってしまいます。あとはどう料理してるかですね。全く別解釈して作り込んでいてくれると、僕としては嬉しいのだけど。この辺り、なかなか人と感覚が合わないところであります。
 あ、一応簡単にイントロダクションしておきますと。
 連続殺人犯通称「ハサミ男」は、次の獲物としてつけ狙っていた少女をみすみす誰か他人に先に殺害されてしまう。それも自分の手口そっくり真似られて。皮肉にもその発見者となってしまった「ハサミ男」は・・・・ という話。わかりやすい表現で心の闇を描いていると言うと安っぽく感じるかもしれませんが、このアイデアはなかなか秀逸なんじゃないかと思いますよ。最後百ページほどは、仕事もほっといて職場で一気に読んじゃった。東京じゃ上映始まってるんだけど、大阪では5月に入ってからの単館上映。こないだ行った時にはもう上映始まってたんだよね東京では。と言って悔しがっても、観に行く余裕はなかったんだけど。それでもなんかちょっと悔しいぜぃ。