東京行き ③

これにハマってました

 いよいよ最終日。今日は買い物じゃ。ちょっと早くに出るつもりなのでリズム崩して申し訳ないなあと思っていたら、ワカちゃんは結構早くに起き出してこられた。仕事なら朝も早いか。そして僕が前夜おりえに誘惑されて読み始め止まらなくなっていた岡田あーみんをむさぼっているのを見て「朝からあーみんですかぁー」と呆れている。「いやコレがまたたこせんと合うんだな」と僕はばりばり煎餅を齧っていたのだが、当然このたこせんもこの家にあった、というかワカちゃんからもらった代物でありました。ワカちゃん出しなに「また来てくださいね」と言ってくれた。ホントに何回でもお邪魔したいよ。ありがとう! 
 やがておりえも起きてきて、この朝はごはんの朝食を用意してくれた。前夜少し残ったすきやきも半熟たまご乗せて出してくれた。そいつを食べると何故か「ホワイトアウト」を思い出した。この味と記憶がセットになってしまった! しかしワシなんもせんと座っとるなあ。
 見てるとおりえも一緒に来てくれるみたい。超アホな買い物だしかなり歩き回るから、ひとりでまわって、でも出発前にもっかい呼び出して最後もうちょつと喋りたいがなあ、と漠然と思っていたから、俄然うきうきしてきた。
 東京に行くと必ず買い物をしてウロウロと歩き回る。オタクにとっては東京でしか手に入らないものがものすごく多いのだ。今回もかなりいろんなところへ行ってみたいが、なんせ候補が多いので、時間を見ながら取捨選択していって回らないといけない。
 家を出るとまずは桜坂を確認しておきたかった。テレビの天気予報では、東京の開花予想日が今日である。ちょっとくらい咲き出してないかなあ、と思ったが、残念ながらまだだった。きっとあと数日のことだ。今回はしょうがない。でも必ず満開の桜坂は見たいな。
 沼部から渋谷へ。途中、今回初挑戦の代官山へ寄ろうと思ったが、目当ての店の開店に少しだけ早い。ここはスルーして先に表参道へ行こう。原宿経由で。
 もう早速人出が多い。それをすり抜けながら最初に入ったのは出来てまだ間もないランバン・オン・ブルー。具体的に何を、という目当てはなかったが覗いてみたかった。どの商品にもさりげなくテーマカラーのブルーが織り込まれていて、そのブルーがまた好みの色なので、いいなあ。中で、ちょっと風変わりなニットタイが気に入った。4色ある。黒か、ブルーか。おりえが「この緑が似合うわよ」と進言。店員さんが話を合わせると「ねえ。草色みたいで虫が寄ってきそうやん」。そんなネタやろうと俺は思うが店員さんは関西人ではないのだから、合わせて行くのが大変だ。それをムシしてブルーを選ぶ。もひとつ、「こちら東京限定です」というコーナーにあったちっさいバッグが気に入った。どこにでも仕舞えてちょっとしたものを入れるのにピッタリ。そこでまたおりえが「体育館シューズとか入れるのにちょうどいいよね」店員さん、「あれ学校にお勤めですか」おりえ「ううん。参観日とか。ねえ」店員さん俄に我々の取り合わせを胡散臭い目で。そりゃそうだ「大阪から来たおのぼりさんで〜す」と入って来てるのに。子どもがいるのか? じゃこのふたりどういう・・・・ おりえ笑いすぎやろ!
 そこはもうそれで満足。次は書斎館だな。朝を食べてないおりえが空腹になったので、途中で食べるところを探す。「オシャレなカフェ」風な店はなんぼでもあるのだが、米が食いたい米が、と言うおりえのリクエストには合わない。ここ青山なんだよなあ。でも発見! ラーメン屋だ! なんでこんなところに、と思ったら、靴を脱いで入るようなかわったラーメン屋。でもここ旨かったよ! 僕は餃子とスタウトビールをいただいたのですが。これ覚えとかないとな。
 書斎館は東京に来ると必ず寄るのだが、今回は補欠扱いだった。でも結局は来てしまう。きっとおとつい諦めたカフカがあるだろうなあ・・・・という一番ヤバい誘惑なんである。ありましたよやっぱり。しかもペン先B。モンブランのBペン先は、そのままではとてもじゃないが快適に使える代物じゃない。買っても今回はもうフルハルターに寄る余裕もない。さてどうするか。
 おりえはおりえでオレンジ色(か赤の)の万年筆を物色中。すぐ思いつくペンはいくつかあるのだが、どうもインク吸入がピストンやコンバーターでは面倒なよう。面倒臭くなって使わなくなった、では意味がない。カートリッジ式で、となると、ペリカンアウロラは諦めないといけない。と、クロスのかわいい色合いのペンを発見。オレンジ、イエロー、グリーンの3色展開。いずれも柔らかなかわいらしい色合い。軸の太さもほど良し。「これ3色揃えたら笑えるよねえ」またそんなことを店員のお姉さん、目をシロクロさせている。でも確かに僕もそういうことならそそられる。万年筆とボールペンとシャープペンで1色ずつというのは、並んだらいけてるだろなあ。ということでおりえはお金を引き出しに銀行を探しに。その間に僕は喫茶コーナーでひと息入れて決断をしようと思った。久々にここの水出しコーヒーをいただく。戻ってきたおりえビックリ。「喫茶店まであるんかいこの店は。」
 さておりえの「買っちゃえ」誘惑心理攻撃が始まった。でもすぐにもうハラは決まってしまう。もともとこいつを目的にフルハルターに行ったのだし、ええい買っちゃえ! はあ・・・・
ふたり揃って試し書きコーナーへ。僕が事前に言ってた通り、店員さんはうやうやしく白手袋で商品を取り出す。「わホンマや、大袈裟〜」って、店員さんの目の前で言うなよ。しかしまあ次々とサービス精神溢れるおりえトーク炸裂である。こんな客は普段筋が違うのだろう、おねえさん笑いが止まらない。おりえがトイレに立つとすかさず「面白い方ですね!」すっかり気に入られた様子。このお姉さんは何度も接客してもらっている。いつもは僕も取り澄ました青山の買い物客だ。試し書きにいつも俳句や短歌を書くので、たぶんそれを見て思い出すのだろう、そういえば何回か来たことのある客だな、と。普段に使いたおしているペリカンの「イカルス」はここで買ったものです。日本に入荷した数が極端に少なくて、いまではもう一般市場には出回っていません。マニアな人に会うと必ず「これ僕も自分用に欲しいなあ」と仰る。ここでは大物ばっかり買ってしまう。今日のもデカいよなあ・・・・。しかし今日は異色のノリで面白かった! やっぱおりえ同伴に限るのお。
 さて青山はこのくらいにしとこう。時間的にヤハリワールド・フットウェア・ギャラリーやジバンシイ・メンズは無理だ。でも代官山には寄って行きたい。移動移動。
 日曜日の渋谷はすごい人だ! 大荷物ぶらさげておのぼりさん丸出しで歩くのはキツい! と、ふーふー言いながら初めての代官山に降り立つ。ここも店はひとつに絞る。RICOという店。たぶんちっちゃい店だが、ここで出してるので是非欲しいジーンズがある。さてさてと歩き出したが方向音痴の僕である。ひとりで来たなら地図と首っ引きである。が今日はおりえがマップ見ながら「こっちやろ」とスイスイ。すぐに目的の店はみつかった。よっしゃ探すぞお、と物色始めると、おりえが「これいいじゃない」と。見ると、まさしく探していたのはソレではないか! しかも色が黒しかないと思っていたら、白と茶もある。茶がいいな、というところまで瞬時に一致。早速試着。ハイぴったりです。んじゃコレで。速い速い! それでも時計を見ると「もうこんな時間か!」どうも帰りの新幹線には間に合わない。「次の便に振り替えてもらえるよ」とおりえ。じゃ慌てることもないか。それでももうウロウロはよそう。ここからなら品川で乗るのが一等近い。それにしてもアンタよく一発であれ見つけ出したなあ、と言うと、「ウン。ジーンズって言うからどんなもん買うのかと思ったけど。アレ見つけて、もし他のを買うって言ったら無理やり押し付けたろ、と思った。似合うよアレ。」僕という奴をとことんまで知り抜いている人物です。
 おりえは渋谷まで乗ってきてくれた。家には逆方向だ。渋谷で別れることに。本当に今回世話になった。どうも上手に感謝が表現できないが。じゃあ、またね、と、ごく普通に別れて、僕は帰路に就くことにした。新幹線は結局次の便の普通席にしろと窓口で切られて、でもちゃんと座ることができて戻って来ました。行きも帰りも席はほぼ満杯。名古屋での愛・地球博客もあるのだろうけれど。
 まったく、大名旅行でしたよ。ものすごく満たされて、帰って参りました。長々と読んでいただいて感謝。