[映画]「笑の大学」

やりましたとも、しょうもないクイズ

昨日、久しぶりに映画館に行ってきた。
http://d.hatena.ne.jp/oriemon/20041212#1102781102こう言われては行かぬ訳にはいくまいて。さすがに採点をうっちゃっておくわけにはいかないが、なんとか頑張ってやりくりつけてみた。
おもしろい! 笑って泣いて、とはこのこと。三谷幸喜は、僕が信頼する二人ともに強く支持する作家であるのにこれまで興味を持たなかったが、これは良かった!
ほぼ二人きりの室内劇で正に舞台向きの素材だろうに、よくこれだけ違和感のないエンターテイメント映画にしてるなあ、と思いながら観ていたのだが、あとでパンフレットを読んだらもとはラジオドラマ、それを舞台にして大人気を博した番組の映画化なのだった。星護監督? 知らんなあ、と思ったら劇場映画初監督。テレビドラマでは有名な方だそうだ。サルマタ失敬!(オヤジギャグ飛ばしている訳じゃないんだ、観りゃわかるんだから。)
別に反戦映画ではないんだが、じんわり理不尽さへの切なさが沸いてくる。人間を丁寧に丁寧に描いた結果だ。ストーリーが勿論面白いが、何よりこの人間の描き込み、掘り下げが見事。見事すぎる。大味な大作映画、見習い給え。そしてこの人間描写を体現する役者がまた見事、見事。おりえ絶賛もむべなるかな。役所広司がいい役者だということは知っているつもりだったけど、これは本当に堪能させてくれたなあ。検閲官という正に僕にとっても敵となるべき人物なのだが、完全に共感させられる。愛すべき人物である。これに対する劇団付き作家―稲垣吾郎演じる―の、しなやかな強さには同じ側の人間として憧れる(作者が言うほど超越した存在には見えなかったが・・・・)。
珍しくハンカチを持ち忘れて行ったのだ。これをあれだけ不覚に思うことも、そうあるまい。ラストは役所サンとおんなじ顔して泣いていたよ。


笑いを検閲するという行為は、客観的に眺めるとそれ自体滑稽きわまりないものである。作中の検閲官の姿も、前半まさに「アホかこいつ」である。だが、時世を握らんとする時、笑いを掌中におさめるのはうまいやり方だ。笑いにこそ庶民のエネルギーが鼓舞され、笑いによって心は生き残っていく。笑いに質の高い低いがあるのかどうか知らないが、お笑い芸人が力を失ったとき、世の中はどうなってしまうのだろう。現代のこの国の笑いはレベルが高いだろうか。少なくとも、「笑の大学」のような映画が作られ、それが多くの人に支持されるならばまだ大丈夫だ。弱者をコケにすることでしか笑えなくなったりしたら、もういけない。作中「お国のために」と警官出演のくだりが白眉たるのも、強いもの大きなものこそ笑い飛ばす相手であるのだという何よりの証なのだと思う。