万年筆箱⑥ ちび万年筆(2003年8月の文章)

ペリカンのでっかいのからちっこいのま

 小さなペンは当然書きにくい。にも拘らず、結構いろんなメーカーがかなり小さな万年筆を出している。
一番有名なのはやはりモンブランの「モーツァルト」とペリカンの「300」。ともに定番モデルをそのまま
ダウンサイズさせている。僕はペリカン300をメモパッドに挿して使っている。ペン先はEF(極細)。勿
論定番800の柔らかさは望むべくもないが、それでもこの細い線でこのスムーズな書き味はペリカンなら
ではだ。こんなちっちゃいのにちゃんと吸入式、というのもいい(モンブランモーツァルトはカートリッ
ジ式にしちゃっている)。僕には珍しく黒の軸で、ただしインクをペリカンのイメージカラー緑を入れてある。
仕事の折いつも携えている。ボールペンも常備しているが、少しでも余裕があればこっちを使う。それから
電車などで文庫本を読んでいて「あ」と思えばこいつで線を引く。後でそこを見直すとか何かに引用すると
いうことでもないが、こうすると結構心に残っていたりする。
 僕ひとりの例を引いて断言などできないが、おそらくこんな感じで、わざわざ小さな万年筆を使うという
のはひときわ趣味的性格が強いのではなかろうか。
他にどんなペンがあるかというと、イギリスのコンウェイ・スチュワートが往年のモデルを復刻させたディ
ンキーというのもある。こちらも定番モデルを小型化したものだが、ボールペンとセットで小銭入れ型ケー
スに収まるようになっており、さながら「旅の友」といった趣向だろうか。上位モデル同様カゼイ
ン製の軸であるのも大変贅沢な感じがする。
 イタリアのデルタも「ドルチェ・ビータ」というモデルを出した時にボールペンと併せて万年筆のチビも
出した。僕はボールペンだけ買ったが、デルタのあの硬いペン先で更に小さくなったら書きにくかろうと想
像する。デルタはこの「ドルチェ・ビータ」を看板商品にしようと考えているようで、最近出した「オーバ
ーサイズ」(モンブランの149やペリカンの1000番とほぼ同じ大きさ)というのも含め、いろん
なサイズを作っている。もとは数年前に「コロッセウム」という名で出した限定品のリメイクである。先日
このオーバーサイズを試し書きさせてもらったが、案外書き易く、バカにしてはいけないなと思った。が、
図体の割に軸が軽過ぎると思った。
 イタリアの万年筆といえばアウロラである。このアウロラが「ミニ・オプティマ」というのを出した。名
の通りこれもアウロラの代表作「オプティマ」の小型化。これがまたデザイン・色・柄ともしゃれている。
他のちび万年筆よりはやや大きいが、そのぶんちゃんと吸入式で、リザーブタンクまで定番品そのままの機
構を受け継いでいる。キャップを尻軸に差すと結構長くなり、殆ど抵抗なく普通に書ける。ひとめ惚れして
即買いをした。こいつはペン先B(太字)を注文し、フルハルターで調整をしていただいた。鬼に金棒の書
き味である。ちっこいペンに極太のペン先とはシャレていると思うが、僕だけか・・・・。これに最近出たセー
ラーの「レッドブラウン」というインクを入れてみた。赤より茶に近い。ペリカンのブラウンと似ている気
がするが、なんだかケチャップ色にも見える。モンブランの「ボルドー」にかえるか、迷っているところだ。
最近はこいつが読書の友になりつつある。冬服になったら内ポケットあたりに忍ばせておきたい1本である。
 しかし、ますますこれは趣味的だな・・・・。


明日から下見旅行に出てしまいますゆえ、こちらの更新ショボくなると思います。