靴 オネスタ・スカルパ

sa10kazu2004-03-08

これ、何語なんだろうな? 
本当は、僕がいかにして靴の魅力に取り付かれたかをまずは語るべきなのだけど、今日この店に行った話をしたくなって。
表題は靴屋さんの名前である。写真がその店。梅田、堂島にある。ジュンク堂の入っているアバンザの道向い、近鉄堂島ビルの地下。ご覧の通り、小さな、ごく普通の店なのだが、厳選した品揃えが良い。僕は脚が幅広で合う革靴がなかったのだが、ここでスペインのヤンコというメーカーの靴を勧めてもらってすっかり革靴のファンになってしまった。そのへんの話は改めてするとして、今日はここで買った黒のストレートチップを持って行った。フォーマルな場で履ける靴を、ということでここで求めた靴。僕が買うものとしては珍しく何の変哲もないオーソドックスなものだったが、質が良くて足にぴたりと合い、そして安いという文句なしの逸品である。ところが、これが昨日の雪でボコボコになってしまった!まさかあんな雪になるとは努々思わず履いて行ったのが運の尽き。帰宅して大慌てで応急処置をしたが、ましにはなったもののもとの見る影もなくなってしまった。大袈裟でなく泣きたくなった。そこで、今日はアドバイスをもらおうとここの店のご主人を頼ったわけである。
ここのご主人は若いスポーツマンタイプのイケメンである。しかしとっても謙虚な方で、また商売気がちっともない。普通ちょっとでも商品に色気のある客にはプッシュしまくるだろうに、少しも売りつけようとなさらない。それどころか「こっちよりこれの方が安いですけどいいですよ」なんてことを仰る。靴に全く知識のない(と言いながら、実は本を読んだりしてかなり勉強して行ったのだが、なんせ机上の知識だからとにかく無知なふりしてプロに教えてもらおうというのが僕のスタンスなのだ)僕に親切に、本当に良い・合ったものを勧めて下さったので一発で好きになってしまった。ここでヤンコの靴ばかり、既に三足買っている。黒のストレートチップはその第一号である。
持参した靴をご覧になったご主人は、それに売り物のシューキーパーを嵌めて入念に点検なさり、「お預かりしていいですか。なんとかしましょう」と仰ってくださった。僕は助言をいただこうと思っていただけだったのでびっくりしたが、これ以上有難いことはないのでお願いすることにした。
さてこれで一安心、用事は済んだが、せっかくだから並んでいる靴を眺めさせてもらうことにした。以前から気になっているイギリスの名門トリッカーズの、ここの店特注という日本人の足に合った木型で造ってもらったという「コーヒー・バニッシュ」という他所で見られないものすごくいい色をした靴たちを眺める。きっとものすごくスケベな目つきだったと思う。そして贔屓のヤンコの靴が並んでいる棚。この前買ったキャメルカラーのダブルモンクストラップの靴が最高に履き心地も良くいろんな人から褒めてもらったという話をしたら、珍しくご主人、商品を薦める口ぶりになる。同じ革を使ったチャッカーブーツがお似合いになると思うんですが、と。このキャメルの革はフランスのもので、エルメスなんかが特注するタンナーの良品だという。僕もこの革の色・質感が大好きだ。試しに出してもらう。今日は新品を買う気はないのだが。それにブーツなんて、お洒落過ぎて僕には履けるのか?
しかし出してもらったが最後である。これはいい! ものすごく上品で、しっとりといきなり足に馴染む。どんなにいい革靴でも最初はやっぱりキツいものだが。即決。これを持ち帰らないでどうする。「ジャケットをネクタイしないで着る時なんかに履いてみてください。絶対似合いますよ!」とご主人。ハイ。明日それで行きます!
僕が試着している間に、ご主人が、今日履いていた(ここで買った2足目の)靴を手に取り、知らぬ間にクリームとブラシで手入れしてくださっているではないか! しかも技ありの「靴先端だけ色を変えて光らせる」という磨き方である。ほんの短時間でびっくりするほど靴の表情が変わったので唖然としてしまった。手入れの仕方を教わり、クリームをひとつ買った。僕が確実に靴に溺れつつあるのをご主人は満足げである。「靴磨きが楽しくなりました」と思わず漏らす。既に週末の日課である。更にこの磨き方はクセになりそうだ!
この店、レディスも置いてあります。是非一度お立ち寄り下さい。品数は多くないかもしれないが、たちどころに足にぴったり合ってなお素敵なデザインの、しかも品質に対してコストパフォーマンスに優れた靴を出してもらえること請け合いますよ!