ブッチ・キャシディとサンダンス・キッド

 映画『明日に向かって撃て!』。実在した西部の無法者をモチーフにした、所謂アメリカン・ニューシネマの代表作。もちろん僕も大好きで、思い出しては時々見返してしまう。
 これの前日譚を描いた『新・明日に向かって撃て!』という作品の存在は知っていたのだけれど(これを見るとどうしてももう一度本家『明日に向かって撃て!』を観ずには気が収まらなくなる。)
 しかし『ブッチ・キャシディ/最後のガンマン』という作品は知らなかった。2011年の作品。監督はマテオ・ヒル。『明日に向かって撃て!』の続編というよりは、モチーフにした同じ人物の晩年を描いた作品、と見るべきだろう。
 ボリビアで警官隊の集中砲火を浴びてブッチ・キャシディサンダンス・キッドは死んだとされる。が、実はブッチは生き延びており、年老いてから或る目的のため故郷に帰ろうとするのだが… という物語。
 実際、二人はボリビアでは死ななかったという説もあり、真相はわからない。だから決して突飛でご都合主義的な設定という訳ではない。
 サム・シェパードが晩年のブッチを好演。ブッチの運命に大きく関わることになるスペイン人を演じたエドゥアルド・ノリエガ、ブッチが死んでいないと信じつづけた老探偵を演じたスティーブン・レイも。
 無法者の晩年は苦い。折しも時代は変わりつつあり、そういった連中が悠長に伸び伸びと生きられた世界からは完全に取り残されている。『明日に向かって撃て!』も既に時代遅れになった男たちへの挽歌であったが、年老いてからは更に苦い。西部開拓時代の終焉というテーマは他にも名作がいくつもあるが、本作もその流れに加わることになる佳編ではないだろうか。