『ドラゴン・タトゥーの女』フィンチャー版

 映画解禁するなりみまくりですな。これは是非原作を読み通してから観たかったのです。
 理想的な「完全映画化」ではないかと思います。
 もちろん文庫で1000ページ超の作品ですから、たとえ上映時間が2時間半あっても相当な要素を削ぎ落とさないといけない。どうしてもミステリーとしては判りづらくなる。しかしもともと原作には、ことストーリー展開に必要かといえばそうでもない部分も結構あります。それは作者がジャーナリストとして日々思っているであろう社会問題だったりします。スウェーデンならではの問題もあり、どこの国にも共通した問題もあり、どちらにせよ大変興味深く読めるので、ストーリーに関係ないからといってそれらの要素が全然読書の妨げにならないところが原作のすごさです。が、流れもテンポも必要な劇映画ではそれらはカットされて行く。おいしいところではありますが、これは当然のこと。
 この映画化作品が成功であると思える点、最大の功績、それは絶対リスベット・サランデルでしょう。原作を読んで誰もが一番印象に残るのがこの登場人物です。それが完璧に描き出されていた。むしろ、作り手は謎説きよりもリスベットが描きたくてこの映画を作ったんじゃないかと思えるほどです。先行作品(本家スウェーデン版映画)でのリスベットも相当評判がいいのでこちらも是非観たいとは思いますが、少なくとも今はこのリスベット以外にリスベットは考えられない、というくらい。その内なる繊細さ、孤独、そして愛らしさまでが切々と伝わってくる。これだけでもうこの映画化は成功と言えるでしょう。
 願わくは、このクオリティで残り二作も映画化されますように、ということです。再度デビッド・フィンチャーが監督を務めてくれるのが理想ですが、そうでなくても、明確な視点を持った力のある監督が(また違ったアプローチになってもいいから)丹念に作って欲しいなと願わずにいられません。とりあえず、まずはスウェーデン版を手に入れることですね。