三浦しをん『仏果を得ず』『あやつられ文楽鑑賞』

 前者が小説。後者がエッセイ。随分前に書評で読んで『仏果を得ず』は文庫が出たら絶対読もうと思っていた。文庫も出てから結構経ってしまったが、ようやく読了。
 小説は、若手太夫を主人公とした一種の成長物語。若手と言っても三十路であるし、舞台が文楽の世界とあって、決して甘口でない、しかし爽やかさのあるお話で大変面白かった。また幾つかの文楽の演目が当然出てくるのだけれど、それらの作品解釈が「なるほど」と思えるものばかり。加えて登場人物が皆キャラが立っており、読み終えるのがちょっぴり寂しくなったくらいだった。
 その後エッセイを読むと、作者がもとから文楽に通じていた訳では決してなく、急激にこの世界に魅了されていったことが手に取るように知られた。と同時に読者もどんどん魅き込まれて行くという仕掛け。実際の太夫さん、三味線さん、人形さんの魅力も語られているし、小説で取り上げられた演目についても詳しく説明されている。これを読んでから小説を読んだ方が解りやすかったか? いや、やはり今回の順番で正解だろう。まずは小説世界に浸って、その後で創作秘話的位置づけともなるエッセイでいろいろ「にやり」とさせられたり「なるほど」と頷いたり。シッカリどつぷりと、楽しむことができた。
 そして、間違いなくまた久し振りに文楽に行きたくなる。年明け、「菅原伝授手習鑑」行こうかなあ。http://www.ntj.jac.go.jp/schedule/bunraku/2011/416.html