ダーティハリー シリーズ

(長文ですし、ネタバレしまくりです)

ダーティハリー」dirty harry 1971年 監督ドン・シーゲル
ダーティハリー2」magunum force 1973年 監督テッド・ポスト
ダーティハリー3」the enforcer 1976年 監督ジェームズ・ファーゴ
ダーティハリー4」sudden impact 1983年 監督クリント・イーストウッド
ダーティハリー5」the dead pool 1988年 監督バディ・ヴァン・ホーン

 やっと全部観ました。
 判ってはいたけれど、1作目とそれ以降は別物と考えていいのでしょう。そう割り切って観れば、それぞれそれなりに個性を打ち出していて、アクション映画としては及第点行ってます。この点、同じく人気ポリスアクションシリーズの「リーサル・ウェポン」と同様。あちらはずっと同じ監督が手がけましたが、自殺願望の男の再生物語として1作目で完結していました。ダーティハリーも、1作目で警察バッジを投げ捨てて完結しています。2も勿論人気があるし、テーマ的にも地続きの物語だけれど、残念ながら演出の格が違う。
 2以降、ワーナーの企画会議が見えるようです。2は強力な敵を立てよう、時代を反映させよう、ハリーの内なる自己と対決るというのは? 3、女性と組ませたら面白いんじゃないか? 4、監督として名を成したご本人に演出してもらおう、愛人と共演もオッケーオッケー。5、最後、もういっちょ頼むよ、子分のバディに監督一人立ちさせてやってくれ・・・・。それだけ、各作品ちゃんと目先を変えて作られています。
 2は内容的には大変良かったです。イーストウッドも若くぎらぎらしてるし、音楽もいいし。ハリーの、無軌道のようでいて一本通している倫理観が描き出されていました。
 3は一番ユーモラスで、それだけに最後相棒ムーアが死んでしまうことに必然性を感じられなかった。確かにハリーの怒りと悲しみは増幅されますが。
 4は監督イーストウッドの個性は充分発揮されていたと思います。そのぶん、重く、強い違和感が残る。これがイーストウッドらしい。ハリーの歳を経た変化が描かれており、私刑を断固許さなかった2の頃のハリーなら、ヒロインを見逃すことはなかったろうと思います。
 5は「その後のハリー」と言った感じ。どんな人物も生きている限り歳を取ります。あの一匹狼が歳を取ったらどうなるか、といったエピソードでしょう。さすがにパワーダウンは否めず、愛銃M−29にもマグナム弾は入っていないような感じでしたが。そういえば「グラントリノ」のコワルスキーの最期は、ハリーだったらこんな死に様を選択するのではないか、と思わせられました。あの作品は他にもいろいろなかつてイーストウッドが演じてきた人物がだぶって見えました。(それを言えば「許されざる者」のマニーは、「アウトロー」のウェールズのその後という解釈もできますね。)
 4と5は、音楽など80年代テイストこってりでしたね。5では後にはやるサイコスリラーの要素を少しかじっていました。そういえばこの時期と前後して、前述の「リーサル・ウェポン」シリーズや「刑事グラハム/凍りついた欲望」といった作品が登場しました。後者はのちにアンソニー・ホプキンス主演で人気シリーズとなるハンニバルシリーズの原作第一作「レッドドラゴン」の一度目の映画化作品です。「サイコスリラー」や「プロファイリング」という概念が時代に一歩先んじていて当時はあまり評価されませんでしたが、そういった流れもちゃんと敏感に取り入れていた訳ですね。

 それはそうと、今回全て山田康雄の吹き替えで観たのですが、言わずもがなのことながら、本当にハマリ役でしたね。「吹き替え」という枠から一歩踏み込んでキャラクター造形にまで影響していたと思います。この人が演じていたのだから、ルパン三世というのは軽さの影に凄みを持ったキャラクターだったのです。これからももしシリーズが続くのなら、そこを忘れないで欲しい。
 ちなみにダーティハリーと言えばコレという有名なセリフが「Go ahead.Make my day. 」。これ4作目に登場するセリフですが、テレビ放映時にはこのシーンはカットされてたんですね。吹き替え音声が無かった。できれば山田康雄の吹き替えでも聞いてみたかったなあ。「泣けるぜ・・・・」

「考えてるな?」

「生え際」を見ればどのハリーか一目瞭然な、ブルーレイのジャケット